トルコとウクライナがFTAに署名、経済関係強化アピール
(トルコ、ウクライナ、ロシア)
イスタンブール発
2022年02月08日
トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は2月3日、ウクライナを訪問し、同国のボロディミル・ゼレンスキー大統領と、両国間の自由貿易協定(FTA)を含む8件の協力協定に調印した。エルドアン大統領は、FTAが両国間の貿易額目標の100億ドル達成を可能にすると強調し、投資や観光などの分野でも協力関係を強化すると主張した。
ウクライナ側の報道によると、両国の貿易品目の約95%相当の1万337品目がゼロ関税となり、1,348品目が関税割り当て、あるいは関税引き下げの対象になる。トルコ統計機構(TUIK)によると、2021年の両国間の貿易額は、前年比58.7%増の74億2,600万ドルだった(添付資料表参照)。
特に、トルコのウクライナからの輸入は、最大の輸入品目である鉄鋼が主力の鉄スクラップ(半製品)の世界的な価格上昇もあり74.7%増と急伸している。トルコはウクライナのスクラップの最大の買い手で、スクラップ輸出全体の約85%を占めている。こういった背景もあり、FTAではウクライナ政府がスクラップ輸出に課している輸出税は留保された。
他方、スクラップ以外の鉄鋼(フラットロール製品など)がFTA対象となっている可能性がある(詳細は未公表)ことから、トルコ国内からは「国内鉄鋼産業に打撃」との懸念の声も出ている。ウクライナからトルコの輸入は鉄鋼と穀物類で全体の約7割を占め、両品目の取り扱いがFTA交渉長期化の要因となっていた。
また、今回の会談では、ウクライナは輸入実績があるトルコの「攻撃ドローン」の国内での製造を進めることでも合意・調印しており、ゼレンスキー大統領は「共同防衛プロジェクト、合弁事業を設立し、経験と技術を共有する」と述べた。
エルドアン大統領は、ウクライナとロシアの紛争解決に向け、危機を平和的に収束させる努力を惜しまないとし、トルコでの3カ国首脳会談を提案した。しかし、ロシア側はトルコとウクライナの軍事協力の合意を警戒しており、ロシア上院外交委員会のアンドレイ・クリモフ副委員長はノーボスチ通信(2月3日)とのインタビューで「ウクライナへのトルコの武器供給は、現在の困難な地政学的状況に対する挑発であり、アンカラ(トルコ)はそれを理解することになろう」と述べるなど、不快感を示しており、トルコでの会談は非現実的ともみられている。
(中島敏博)
(トルコ、ウクライナ、ロシア)
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