メルコスール・韓国FTAによるメリットを双方が分析

(ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、韓国、メルコスール)

米州課

2022年02月25日

ブラジルのシンクタンク、ジェトゥリオ・バルガス財団(FGV)と韓国国際交流財団が共同で発表した「メルコスール・韓国貿易協定:技術革新の提案に係るフレームワーク外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」と題するレポートによると、メルコスール・韓国自由貿易協定(FTA)は、2国・地域間の貿易関係を強化させるだけでなく、メルコスールにおいて、サービス、知的財産、政府調達などの非関税障壁の分野で進展をもたらす、また、このFTAにより韓国からの高度な技術流入にも期待できると分析している。2月18日付現地紙「バロール」が報じた。

本レポートによると、2018年5月に交渉開始したメルコスール・韓国FTAは、物品貿易、サービス、原産地規則、衛生植物防疫措置(SPS)、貿易の技術的障害(TBT)、政府調達の章について引き続き交渉が行われている。

当該FTAについて韓国では、自動車、石油化学、鉄鋼、半導体、液晶、機械、機械部品、電子情報、通信などの業界団体が、早期妥結を求めている。これらの業界団体は、FTAが締結されることで、関税削減により価格競争力が強化されるだけでなく、メルコスールにおける非関税障壁の撤廃、知的財産保護によって自国企業の価値を高めることができるといったメリットを強調している。他方、農業セクターは市場開放に消極的で、韓国農村経済研究院の調査によれば、本FTAが発効した場合、韓国国内の農業セクターは15年間で21億ドルの損害を受けることになると分析している。

メルコスール側で、このFTAにより最も恩恵を受けるのは農業分野、と本レポートでは分析している。韓国は動植物検疫の輸入規制が厳しく、農産品に高関税が課されているためだ。ブラジル全国農業家畜連合(can)の調査では、韓国が締結する中国、米国、EU、ニュージーランド、オーストラリアとのFTAでは、韓国側での農産品の関税削減期間、いわゆるステージング期間が他の産品と比較して長く、よってメルコスール・韓国FTAでも議論の焦点になると強調している。

ブラジル全国工業連盟(CNI)は「本FTAにより不利益を被るのは51業種に上るにもかかわらず、恩恵を受けるのはわずか11の業種にとどまる」と消極的な姿勢をみせる一方、FTA発効によるビジネス環境改善、官僚的な手続きの簡素化、貿易円滑化に期待を寄せる。具体的には、ブラジル産業財産庁(INPI)と韓国特許庁の特許審査ハイウェイ試行開始、両国間のAEO(認定事業者)相互認証の推進、投資促進のための両国・地域間協力などを挙げている。

メルコスールはまた、韓国の高度な技術力の流入に期待を寄せる。産業分野におけるデジタルトランスフォメーションやヘルスケア分野での協力など、次世代の課題解決にむけ、韓国からの技術投資もFTAによって受けられる恩恵と分析している。

(辻本希世)

(ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、韓国、メルコスール)

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