接種拒否による解雇・停職、労使調停委員会は雇用主を支持

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2022年02月09日

南アフリカ共和国の紛争解決機関である労使調停委員会(CCMA)(注)は、ワクチン未接種を理由にした労働者の解雇・停職に関する係争について、会社の規則にのっとりワクチン接種を拒否した労働者は解雇される可能性があると判決を下した。2事案に対し、1月21日、25日と立て続けに雇用主側を支持する判決が出た。

1例目では、ある企業がリスク軽減を目的に、従業員にワクチン接種を義務付けていたところ、研修業務を担当する女性従業員が接種を拒否したため解雇した。同従業員は不当だと訴えていた。2例目では、他の従業員と接触の多い男性警備員が宗教上の理由で接種を拒否し、停職になったことを撤回するよう求めていた。

南アの法律ではワクチン接種の義務化について明示されていないが、政府は2021年6月に「特定事業場における労働安全衛生措置に関する指令」を発表し、安全な労働環境を保持する責任を雇用主が負うよう指示していた。具体的には、業務の内容や労働環境を考慮の上、ワクチン接種義務化を判断するためのリスクアセスメントの実施や、年齢や基礎疾患に応じてワクチン接種が必要な従業員を特定することを求めていた。ただし、在宅勤務者など感染リスクの低い従業員に接種を強制することがないよう留意もしていた。

CCMAの責任者であるペトラス・ベンター氏は、今回訴えられた企業が実施したワクチン接種の義務化は全従業員の健康と安全を守るためで、政府の指令を順守した結果だと述べた。

今回の判決に対して、南ア最大の労働組合である南アフリカ労働組合会議(COSATU)は他の組合を代表して、南アの失業率が34.9%と高い中で、「いかなる労働者の解雇も絶対に避けなければいけない」とし、「今回の判決は非常に失望している」という遺憾の意を述べた。COSATUは、解雇された労働者に対して労働裁判所で再審理の請求をすることを勧めている。

(注)CCMAは、1995年労働関係法(LRA)第66条に基づき設立された独立機関。雇用者と労働者の間で、仕事に関連する紛争が発生した場合、CCMAに相談することが可能。

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国)

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