米金融大手シティグループがシティバナメックス銀行のリテール部門売却を発表

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2022年01月13日

米国金融大手のシティグループは1月11日、メキシコにおけるシティバナメックス銀行(注)の消費者向け(リテール)銀行サービスを売却することを発表した。売却理由について、同グループはプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、「シティグループが世界的に進める戦略見直しの一環」により「グローバルネットワークを生かして強みを発揮できる、競争力のある分野にリソースを集中するため」と説明。その上で、「大手法人向け銀行サービス、および富裕層向けプライベートバンキングサービスはメキシコでの営業を続ける」としている。

売却の対象は「バナメックス」の商標のほか、全ての支店における個人向けならびに中小企業向けの銀行サービスで、クレジットカード事業、個人向け貸し付け、中小企業向けの貸付事業なども売却対象に含まれる。これらのサービスは、シティバナメックス銀行事業の約70%を占めるといわれている(現地紙「レフォルマ」1月12日)。シティグループのジェーン・フレーザー最高経営責任者(CEO)は同プレスリリースの中で、「メキシコがわれわれにとって優先的に取り組むべき市場であることは変わらない」として、「メキシコの成長性、投資環境の見通しに起因するものではない」とコメントしている。

シティグループによる売却の発表に際して、大蔵公債省は「シティグループの決定はメキシコへの信頼を損なうものではない」と題するプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出し、法人向けサービス部門への投資が続くこと、シティグループから大蔵公債省に対して事前に売却する旨の報告があったことを明らかにした。また、「このように大きな銀行が国内から撤退することは、大蔵公債省を含む連邦政府機関にとってデリケートな問題を引き起こすことになる」とし、「常にメキシコの国益を考慮し、金融市場の寡占を防ぐことも含めて、厳然たる対応を取っていく」と表明している。

誰が「購入者」となるのか

シティグループは売却の詳細を追って発表するとしているものの、現時点で購入者は決定していないとみられる。現地有力紙の「レフォルマ」は、「購入者が明らかでないまま売却が発表されるということから、シティグループの提示した価格ではどこからも購入の手が挙がらなかったと思われる」との識者の見方を紹介している。

考えられる買い手の候補として、メキシコ国内で営業しているサンタンデール銀行、バノルテ銀行、インブルサ銀行、ブラジルのイタウ・ウニバンコ銀行などの名が報道されているが、購入の検討を始めたことを明らかにしているのはサリーナス・グループのオーナーでアステカ銀行などを所有するメキシコ人資産家のリカルド・サリーナス・プリエゴ氏だ。同氏は自身のツイッターで、「私はいつでもメキシコを信じて投資を行ってきた。購入の是非を検討するようチームに指示した」とコメントしている。シティバナメックスのリテール部門の売却価格は、125~150憶ドルになると予想されている(現地紙「エル・ウニベルサル」1月12日)。

(注)シティバナメックス銀行は、米国金融大手シティグループが運営するメキシコの大手銀行。「バナメックス(Banamex)」とは、1884年に創立された「メキシコ国民銀行(El Banco Nacional de México)」の略称。2001年にシティグループにバナメックス銀行が買収された後、2016年から「シティバナメックス(Citibanamex)」の名称を使用するようになってからも、バンコメル(Bancomer、現BBVA)銀行と並んで、メキシコを代表する銀行であり続けた。シティバナメックス銀行は、国家銀行証券委員会(CNBV)によって国内の金融システム上最も重要な金融機関PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の1つに選ばれており、BBVAに次いで事業規模の大きい銀行として認定されている。

(松本杏奈)

(メキシコ、米国)

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