欧州海運業界、EU ETS適用を歓迎もカーボンリーケージを懸念

(EU)

ブリュッセル発

2022年01月28日

欧州委員会は2021年7月、気候政策パッケージ「Fit for 55」において、EU排出量取引制度(EU ETS)の改正を提案し、海運部門にも適用する方針を示した(2021年7月16日記事参照、注)。欧州港湾協会(ESPO)は2022年1月24日、声明を発表し、欧州委の提案を歓迎した(プレスリリース)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。しかし、EUに限定した制度では政策の効果やEU海運部門の国際競争力低下が懸念されるとして、EUに対して国際海事機関(IMO)での国際的なルール形成に向けて働き掛けを強めることも求めた。

改正案では、船籍にかかわらず、大型船舶(総トン数5,000トン以上)の(1)EU域内港間を航行およびEU域内の港湾に停泊中の排出量、また(2)EU域内国と域外国間を航行する際の排出量の50%を適用対象としているが、ESPOは適用対象が狭すぎ、コスト削減のため、航路を変更したり、EU近隣国の港を選び適用を免れようとしたりする船舶が出ると指摘。EU域内港を回避する動きが出れば、船舶の交通や港湾関係者のビジネスに影響を与え、北海やバルト海、地中海にあるEUの物流網の拠点港の中には、近隣国の港との競争がさらに厳しくなり、深刻な打撃を受ける港が出てくる恐れもある、と述べた。欧州委の提案には適用状況についてのモニタリングに関する条項が盛り込まれたが、ESPOは適用開始後では不十分で遅すぎるとして、現時点でのカーボンリーケージ(排出制限が緩やかな国への産業の流出)について、改正案の対象地域への影響や、「Fit for 55」パッケージ全体がもたらす影響について十分に調査・評価することを求めた。そして、法的に可能であれば、EU ETSの適用を回避しようと近隣国から出港・帰港する船舶も適用対象とすることや「EU域内港を回避する動き」を明確に定義し、そうした動きが認められた場合の対策を予見するために、改正案にあるモニタリングの仕組みの強化を提案した。さらに、海運部門対象のETSの収益は、持続可能な代替燃料の普及、船舶や一部の港湾インフラの電動化といった同部門の脱炭素化に活用することなども求めた。

欧州議員の「運航事業者のETSコスト負担」を保証する提案を、船主側は歓迎

欧州船主協会(ECSA)も1月24日、EU ETS改正案に関する声明を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同改正案についての欧州議会の環境・公衆衛生・食品安全委員会での審議において、法案を担当する報告者(rapporteur)の議員から、船主と運航事業者間の契約に拘束条項(binding clause)を設けることについて要件を改正案に盛り込み、運航事業者がETSのコストを負担することを保証するという修正提案があったことを歓迎した。また、海運部門に関する基金を創設し、ETSの収益の少なくとも75%を同基金に割り当てるという提案についても、ECSAは支持を表明し、これらの2提案を欧州委の改正案に盛り込むことを求めた。

(注)「Fit for 55」については、ジェトロ調査レポート「『欧州グリーン・ディール』の最新動向(第1回)政策パッケージ「Fit for 55」の概要と気候・エネルギー目標」(2021年12月)も参照。

(滝澤祥子)

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