従業員の新型コロナワクチン接種、使用者の感染防止対策には規定なし

(エチオピア)

アディスアベバ発

2022年01月26日

エチオピアでは、使用者が職場の安全を守るために、職場に来る従業員への条件として、新型コロナウイルスワクチンの接種を義務付けることや、従業員の個人負担で一定期間ごとにPCR検査の陰性証明を提出させるなどの措置は難しいようだ。

エチオピアでは現在、ワクチンがあれば、12歳以上の希望する誰もが新型コロナワクチンを打てるものの、接種済み人口の割合は約1割にとどまっている。宗教指導者の勧めや個人的な信条に基づき、接種を希望しない労働者は各職場にいる。同国では、保健省中心の作業班が、医療・保健、金融、運輸部門への接種義務化を検討しており、代替手段として5日ごとにPCR検査の結果を求める案もあるという(注1)。

ジェトロでは、一般の職場でこれらの措置をとれるか、弁護士事務所に確認した。弁護士事務所の見解では、現行の新型コロナウイルスまん延防止規則を含めた関係法・規則には、使用者に求める要件として従業員に接種を義務付けることが規定されていない。一定期間ごとの新型コロナウイルス感染の陰性証明の提示についても、労働法では、従業員は使用者の求めに応じてエイズウイルス(HIV)以外の医療検査結果を提示することが求められるが、採用時ならびに法律や規則に応じて検査が必要となる場合は、使用者側がかかる費用を負担する。労働法が労働者保護的な性質を持つことから、新型コロナウイルス感染症においても検査の費用負担は、類推適用(注2)される可能性が高いという。従って、新型コロナウイルス感染の予防接種の強制、ならびに従業員負担によるPCR検査の陰性証明の提出といった措置の導入は難しいということになる。

エチオピアの新型コロナウイルス感染症陽性確認者数は、累計46万2,107人(2022年1月23日時点)。2021年12月下旬からの急増時には、検査陽性率が35%の水準にあったが、1月以降は減少に転じており、1月23日は7.78%(陽性確認者数374人)となっている。

(注1)アフリカでは、公務員を対象に接種を義務化しているエジプトの事例などが挙げられる。

(注2)直接定めた法規がない場合に、もっとも類似した事項についての法規を適用すること。

(関隆夫)

(エチオピア)

ビジネス短信 96f988ddb28d9236