2021年のCPI上昇率は前年比36.08%、通貨安の影響

(トルコ)

イスタンブール発

2022年01月12日

トルコ統計機構(TUIK)の発表(1月3日)によると、2021年の消費者物価指数(CPI外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)上昇率は前年比(2021年12月の前年同月比)36.08%となり、2021年9月に発表された政府の中期経済計画の同年末インフレ(CPI)目標値16.2%を大きく上回った。12月を前月比で見ても、外為市場でのトルコ・リラ急落の影響を受けて、市場予測を大きく上回る13.58%の上昇となった。同様に、国内生産者物価指数(D-PPI外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)上昇率も79.89%と、前月の54.62%から高進した。

12月のCPI上昇は運輸(前年同月比53.66%)、食品・飲料(43.80%)、家庭用品(40.95%)が牽引した。食品では、干ばつの影響で穀物生産が14.3%減となったことも、未加工食品(39.83%)、加工食品(47.57%)への上昇圧力となった。主要商品項目では、耐久消費財が48.93%と著しい上昇を見せた。また、エネルギー(42.93%)、サービス部門(22.33%)の上昇も目立った。サービス部門では、ホテル・レストランの上昇(40.85%)が顕著に見られた。

D-PPI上昇率は、リラ下落の影響に加え、エネルギーなど国際商品価格の上昇傾向が続いている。項目別では、エネルギー(122.76%)や中間財(92.13%)といった輸入価格の影響が大きい部門での上昇が目立っている。

トルコ中央銀行は9月以降12月にかけて、政策金利を19%から14%まで、500ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の引き下げを行った。中銀のカウジュオール総裁は、9月に政策金利がCPIを下回ることはないとしていたが、実質的なマイナス金利となっている。トルコ・リラは、エルドアン大統領が12月20日にリラ預金での為替差損分を政府が補填(ほてん)するという実質的な為替のドルペッグを発表したことで、一時は対ドルで18リラを割り込んだが、13リラ台(1月5日現在)まで回復した。

2022年のCPIは、2021年9月からのトルコ・リラ減価のパススルー効果に加え、12月に発表された電力価格、天然ガス価格、公共交通機関の引き上げに加え、たばこ・アルコール飲料への特別消費税率の引き上げがインフレ上昇圧力になるとみられており、40%以上の上昇を予想する向きもある。中銀は市場での供給制約を消費者物価高騰の要因としており、政府は物価抑制に向けた対策として、リラ減価によって商品価格を引き上げて利益を得ようとする業者に対しては厳罰を科すとしている。なお、TUIKの発表と同時に発表された独立調査機関ENAグループの調査によると、12月のCPIは前年同月比で82.81%の上昇で、政府発表とは乖離している。

野党などは失敗と批判している政府の「新経済計画」だが、エルドアン大統領は同政策によってトルコは世界10位の経済力を達成することが可能と主張している。

(中島敏博)

(トルコ)

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