一部外国人の滞在と労働手続きを簡素化

(ポーランド)

ワルシャワ発

2022年01月12日

ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領は1月4日、一部の外国人の滞在および労働手続きを簡素化する「外国人に関する法律」の改正に署名した。今回の法改正は、ポーランドで最も頻繁に発行される一時的な滞在許可と労働許可を与えるための手続きを合理化するもので、6カ国(アルメニア、ベラルーシ、ジョージア、モルドバ、ロシア、ウクライナ)の国民が対象。

主な改正内容は以下のとおり。

  • 外国人への業務委託宣言に基づいた就労可能期間を6カ月から24カ月に延長。その期間は労働許可証を取得しなくても就労が可能。
  • 12カ月の清算期間の廃止。これにより、外国人は業務委託宣言に基づいて24カ月にわたり就労が可能。
  • 雇用主が他の従業員と同等の報酬(少なくとも最低賃金以上)を提供することを条件として、業務委託宣言の内容を記録。また、住民登録証明書の提出と生計維持のための定期的な安定した収入証明の提出を不要に。
  • 外国人が仕事を引き受けたことを郡労働局に通知するための期間を7日間に延長。

2021年9月末時点で社会保険庁(ZUS)に登録されている外国人は84万6,418人。これは前年同月比で22.8%、前年12月比で16.7%の増加となった。その中では、ウクライナが最も多く、61万6,901人で全体の72.9%を占めた。次いで、ベラルーシ(6万4,573人)、ジョージア(1万9,832人)が続く。また、パンデミック発生前の2020年2月から2021年9月末までの時点で最も増えているのは、ウクライナ(7,600人増)、ベラルーシ(2,300人増)、ジョージア(1,000人増)だった。ZUSのゲルトルダ・ウシチニスカ会長は2021年12月のインタビューで、「2022年1月に100万人を突破するだろう」とコメントし、社会保険の対象となる外国人の数が絶えず増加していることを強調した。

その背景にあるのは、ポーランドでの労働力不足だ。EU統計局(ユーロスタット)によると、ポーランドの2021年11月の失業率(季節調整済み)は3.0%で、EU加盟国の中でもチェコ(2.2%)、オランダ(2.7%)に次ぐ失業率の低い国だ。EUおよびユーロ圏諸国の平均よりも低い傾向が数カ月続いており、パンデミック前の水準にも回復している。

家族・社会政策省が2021年10~11月に実施した調査によると、約41%の企業が外国人労働者を求めている。また、78.4%がポーランド人の労働者が足りないためと回答し、70%が外国人はポーランドの労働市場にプラスの影響を与えているとしている。ポーランド雇用者連合(注)は、労働力不足によりポーランド企業の発展が阻害されてしまうことを危惧する見方を示していた。今回の法改正により手続きが簡素化され、外国人がポーランドでの労働力不足を迅速に補うことが期待される。

(注)ポーランドで最も歴史がある最大の雇用者連合(1万9,000社から成る)。

(今西遼香、ニーナ・ルッベ)

(ポーランド)

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