2022年から民間企業に初めて最低賃金を導入

(エジプト)

カイロ発

2022年01月06日

エジプトでは1月1日から、民間企業に対して初めて最低賃金支払い義務が適用される。国家賃金評議会(NWC)は12月21日、月間最低賃金を2,400エジプト・ポンド(約1万7,760円、EGP、1EGP=約7.4円)とすることを公表した。新型コロナウイルス禍の中の経済停滞もあり、経済・産業界から反発も出たため、観光や小売り、縫製など特定の産業では一定の猶予期間を認める。ハラ・ザイード計画相によると、民間部門の労働者約2,000万人が対象になる。

エジプトの公的機関に対してはこれまでも月額最低賃金が規定されていた。2018年までは1,200EGP、2019年からは2,000EGP、2021年7月には2,400EGPと上昇し、約3年で倍増した。政府によると、2021年7月の最低賃金の引き上げにより、2021/2022年度の予算における公的機関職員への給与支払額は370億EGP増となる見込みだ。

民間企業への最低賃金の設定と、公的機関の最低賃金引き上げの背景として、物価上昇の影響や貧困層対策がある。2016年に固定為替制から変動為替制に移行したタイミングで、EGPの対ドル価値がほぼ半減し、輸入に依存する食品や生活必需品などの価格が高騰した。消費者物価上昇率は、2017年に前年比29.5%、2018年には14.4%となり、物価上昇が続いてきたが、中央銀行によると、2021年11月時点で前年同月比5.6%と徐々に落ち着きを見せている。その一方で、中央動員統計局によると、エジプトの2019/2020年度の貧困率は29.7%と高止まりしていた。所得向上政策は、政府が推進する「ハヤ・カリーマ(Decent Life)」と呼ばれる貧困解消政策の一環とみられている。

近年、政府は最低賃金の引き上げや社会保障の拡充などの施策に積極的に取り組んでいる。その一方で、これらの予算の財源確保のために社会保険料を引き上げているほか、所得税や付加価値税などの納税に関する統一電子納税システムの導入や通関・関税システムの電子化など、税制度を整備し、課税・徴税を強化している。

(井澤壌士)

(エジプト)

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