第3四半期の米貿易赤字、2,250億ドルで過去最高更新、工業用原材料などの輸入増加

(米国)

ニューヨーク発

2021年12月28日

米国商務省が12月21日に発表した、2021年第3四半期(7~9月)の貿易統計(国際収支ベース、季節調整済み)によると、輸出(財・サービス)は前期比0.8%増の6,324億ドル、輸入は2.7%増の8,574億ドルだった(添付資料「表1 財・サービス貿易収支推移」、「図 財・サービス貿易収支推移」参照)。輸入の伸びが輸出のそれを上回ったことから、赤字額は179億ドル増加し2,250億ドルとなった。赤字額はデータが確認できる1960年以降最高水準となり、3期連続で記録を更新した。財、サービスの内訳では、財が2,748億ドルの赤字、サービスが499億ドルの黒字だった。

財貿易をみると、輸出が前期比1.1%増の4,416億ドル、輸入が1.4%増の7,164億ドルだった(添付資料表2参照)。輸出を主要財でみると、工業用原材料、消費財が前期比増となった。個別材では、原油を含むエネルギー関連製品、医薬品、民間航空機・エンジン・部品が押し上げ要因となった。輸入を主要財でみると、食料品・飲料、工業用原材料、資本財が伸びた。個別材では、原油を含むエネルギー関連製品、化学製品(医薬品を除く)、金属・非金属製品などが押し上げ要因となった。

エネルギー関連製品の伸びは、原油価格の上昇が影響した。第3四半期の平均原油価格(WTIスポット)は、前期比6.9%増の1バレル当たり70.62ドルで、四半期別では2014年第4四半期(10~12月)以来で最高となった。原油の輸出量は前期比9.6%減少、輸入量は6.2%増加した。

EUとの医療用財、カナダとのエネルギー関連財の輸出入が増加

財貿易を主要国・地域別にみると、輸出では、EUが前期比4.4%増699億ドルで、最大の押し上げ要因になった(添付資料表3参照)。血液・ワクチンなど(HTSコード3002項)や、原油(2709項)、民間航空機・エンジン・部品(8800項)などが増加した。次いで、カナダが3.2%増の763億ドルだった。食用の甲殻類(0306項)、亜鉛鉱(2608項)、原油の伸びなどが影響した。輸入でも、EUが前期比3.5%増の1,260億ドルで、最大の押し上げ要因になった。血液・ワクチンなどや、有機化学品の複素環式化合物 (2934項、2932項)などが増加した。次いで、カナダが2.7%増の914億ドルと押し上げた。原油、石油ガスそのほかのガス状炭化水素(2011項)、電気エネルギー(2716項)などが増加した。

対中貿易は輸出入ともに減少したが、プラスチック製品や、衣類、エアコンなどの輸入がより多く減少したことから、貿易赤字額は前期より21億ドル減少し844億ドルで、赤字額の減少は2期連続となった。

なお、12月7日の商務省の発表によると、10月の輸出(財・サービス)は9月より168億ドル増加の2,236億ドル、輸入は25億ドル増加の2,907億ドルだった。今後の見通しに関して、オックスフォード・エコノミクスのチーフ米国エコノミスト、グレゴリー・ダコ氏は「今後(新型コロナウイルス感染の)パンデミックの懸念が緩和されるまで、貿易赤字は歴史的に拡大し続けると予想している」「外国でのコロナ感染の増加は、再び世界の需要を抑制する恐れがあり、輸出の伸びが輸入よりも遅くなると、さらに大きな赤字になるリスクがある」と述べた(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版12月7日)。

(大原典子)

(米国)

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