香港で立法会選挙実施、親中派が圧勝
(香港)
香港発
2021年12月21日
香港で12月19日、立法会(日本の国会に相当、定数90)(注1)の議員選挙が行われた。投開票の結果、1議席を除き、「建制派」と呼ばれる親中派、体制派が議席を独占した。今回の選挙は「愛国者治港」(愛国者による香港統治)を大原則とする選挙制度改革が行われて以降、初めてとなる立法会議員選挙で、定数90に対し153人が立候補していた。
投票率は30.2%(暫定値)で、1997年の香港返還以降に実施された7回の立法会議員選挙の中で最低となった。香港特別行政区政府(以下、香港政府)は投票当日、公共交通機関の利用を無料とし、市民の携帯電話へ投票を促すショートメッセージを送信するなど投票率向上に努めたが、前回2016年選挙時の投票率(58.28%)から28ポイント強低下し、多くの市民が棄権する結果になった。また、地元複数メディアの報道によると、白票および無効数は推計2万7,000票で、投票数全体の2%を超え過去最高だった。
香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は12月20日の記者会見において、投票率が過去最低となり市民は今回の選挙に賛同していないのではないかとの指摘に対し、「確かに投票率は以前より低いが、135万人が投票をしている」とした。その上で、今回の有権者登録者数(注2)は447万人、有権者登録率は92.5%にのぼり、過去2回の選挙よりも高かったこと(2012年は73%、2016年は79%)を挙げて「市民が重要視しなかった、また支持を得られなかった選挙と言うことはできない」とした。
全国香港マカオ研究会の劉兆佳副会長は、新人当選者が多いことに触れ「大多数の新議員はこれまで政治とは無縁だ。職業政治家が少なく、香港は『脱政治化』『脱過激化』した」と述べた。また、香港中文大学政治・行政学科の林朝暉専任講師も「当選者の6割は初当選で、特に選挙委員会枠で初当選した22人中、4分の1は学者、シンクタンク、労働組合、ビジネス界出身と伝統的な政治家ではない。国家全体の利益を考え、政府と議会が協力し民生に有利な政策を立案するだろう」とコメントした(「明報」12月21日)。
投票を促す広東語、英語でのメッセージ(ジェトロ撮影)
(注1)定数90のうち、市民が直接投票できる「直接選挙枠」は20、業界別有資格者が投票できる「職能枠」は30、選挙委員会委員1,500人が投票する「選挙委員会枠」は40。
(注2)香港では、日本と異なり自ら登録しないと有権者にはなれない。
(渕田裕介)
(香港)
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