2022年の州別最低賃金、首都ジャカルタ州知事が引き上げ発表

(インドネシア)

ジャカルタ発

2021年12月23日

インドネシア・ジャカルタ特別州のアニス・バスウェダン知事は12月18日、11月に知事決定2021年第1395号で定めた2022年の最低賃金を引き上げると発表した。労働組合側が引き上げを支持する一方で、経営者団体や商工会議所は反発している。

地元メディアによると、アニス知事は、これまで445万3,945ルピア(約3万5,632円、1ルピア=約0.008円。2021年比0.85%増)と決定していた2022年の最低賃金を464万1,854ルピア(2021年比5.11%増)に引き上げる(「コンパス」紙12月19日)。同知事は最低賃金引き上げの決定について「人々の購買力を高めることが期待される。また、労働者への感謝のかたちでもある」と説明し、5.11%の上昇率は雇用者側にとっても実現可能な数字だとした。

インドネシア経営者協会(APINDO)会頭のハリヤディ・スカムダニ氏は20日、「知事決定が公布されれば、ジャカルタ州行政裁判所へ告訴する」とし、法的措置も辞さない構えを示した。ハリヤディ氏は、アニス知事が賃金に関する政府規則2021年第36号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに違反していると主張しており、今回の引き上げには法的根拠がないとして非難している(「テンポ」紙12月20日)。

また、インドネシア商工会議所(KADIN)ジャカルタ支部の会長ダイアナ・デウィ氏は一方的な決定と抗議した上で、「最低賃金の引き上げは、物価の上昇や家計の逼迫を招く恐れがある。賃金上昇が購買力を増加させるとするのは不適切だ」と指摘した(「コンパス」紙12月19日)。

現地の労務事情に詳しいパーソルケリー・コンサルティング・インドネシアの森智和氏は今回の最低賃金引き上げに関し、法的に決定されるまでは事態を静観するよう呼び掛けている。また、同氏は「今回の発表をきっかけに、カラワン県やブカシ県など日系企業が集積する他の地域でも最低賃金が見直される懸念がある」と指摘しており、ジャカルタ特別州以外の地域の動向も注視が必要だ。

(尾崎航)

(インドネシア)

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