瀋陽市、東北地域で初の「次世代AIイノベーション創出発展試験区」に認定

(中国)

大連発

2021年12月10日

中国科学技術部(科技部)は12月2日、遼寧省瀋陽市を「次世代人工知能(AI)イノベーション創出発展試験区」(注1)として認定した。東北地域の都市では初めての認定。

科技部は2019年9月にこの試験区構想をスタート、2023年までに中国全土で20前後の都市を認定する予定だ。

瀋陽市政府は2018年5月に公表した「瀋陽市新世代AI発展計画(2018-2030)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」や2021年7月に公表した「新発展段階におけるイノベーション創出力を高める施策」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどの関連施策の実施を通じて、AI分野の発展を積極的に志向している。科技部は今回の認定を通じ、AIを活用した製造業の転換・レベルアップや、中国政府が掲げる東北地域の旧来の工業基地の全面的な振興に向けて、同市のイニシアチブの発揮を期待している。

12月2日付の東北新聞網は、AI分野で同市の注目される取り組みについて、以下のとおり紹介している。

  1. 瀋陽新松ロボットと中国科学院瀋陽自動化研究所は、真空ロボットのダイレクトドライブの制御、動的偏差の検出・補正技術を共同研究し、300ミリのシリコンウエハー搬送ロボットなどを開発。
  2. 小牛翻訳(NiuTrans、瀋陽市)は、3種類(テキスト、音声、グラフィック)の言語知能技術を生かした「スマート会議同時通訳システム」を開発。多数の国際会議などで活用。
  3. 中国科学院瀋陽自動化研究所と東北大学(瀋陽市)などは、環境適応性に優れた視覚センサーとナビゲーション・ポジショニングモジュールを開発。産業用ロボット、水中ロボット、極地研究用ロボット、新型コロナウイルス検査用ロボットなどに幅広く応用。
  4. 中国最大のソフトウエア開発・ITサービス会社の東軟集団(Neusoft、瀋陽市)は新世代のスマート自動車用の車載通信システムを開発。

瀋陽同市に所在するAI関連企業数は計552社、2020年の関連企業による生産額は前年比20%増の570億4,700万元(約1兆270億円、1元=約18円)と、AI分野では一定規模のクラスターが形成されつつある。市政府は2021年にイノベーション支援の補助金として計5億9,627万元を支出するなど、財政面でもAI分野の発展を積極的に支援している。

(注)「次世代AIイノベーション創出発展試験区」はAI技術政策、実証実験、社会実装が先行している地域を科学技術部が選定する取り組み。瀋陽市は17番目に認定された。

(李莉)

(中国)

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