米政権、人権侵害を理由に中国企業・研究機関を証券投資禁止・輸出管理対象に追加

(米国、中国、ジョージア、マレーシア、トルコ)

ニューヨーク発

2021年12月17日

米国財務省は12月16日、ドローン大手DJIなど中国企業8社を米国人(注)による証券投資の禁止対象に追加したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。商務省も同日、中国の企業・研究機関を中心に37事業体の40拠点を輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL)に掲載すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。正式には12月17日付の官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公示する。

財務省の措置はジョー・バイデン大統領が6月に署名した大統領令に基づくものだ。この大統領令では、監視技術を含む中国の軍事産業に関わる特定の中国企業に対する米国人による証券投資を禁止している(2021年6月7日記事参照)。対象企業は、同省の外国資産管理局(OFAC)が管轄する「非・特別指定国民 中国軍事・産業複合企業リスト(NS-CMIC List)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に掲載の上、公開されている。今回、DJIのほか、人工知能(AI)大手の依図科技(YITU)や曠視科技(メグビー)、云从科技(クラウドウォーク)などが新たに掲載された。財務省は「これら8企業は、新疆ウイグル自治区のイスラム系ウイグル民族をはじめとする民族・宗教的マイノリティーに対する生体認証による監視・追跡を積極的に支援している」と指摘している。財務省は12月10日にも中国AI大手の商湯科技(センスタイム)を同様の理由でNS-CMIC Listに掲載しており、人権侵害に加担の疑いのある中国企業に対する監視の目を厳しくしている(2021年12月13日記事参照)。

商務省が今回ELに掲載した40拠点の国別の内訳は、中国が34、ジョージアが3、マレーシアが1、トルコが2となっている。ELには、米政府が「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為に携わっている、またはその恐れがある」と判断した団体や個人を掲載し、それらへ米国製品(物品、ソフトウエア、技術)を輸出・再輸出・みなし輸出などを行う場合には、事前許可が必要となる。今回新たに掲載した事業体は、EARの対象となる全ての製品に関して許可審査方針が「原則不許可(presumption of denial)」の扱いとされている。商務省は今回追加した中国拠点のほとんどに関して、中国政府による軍事用途・人権侵害のためのバイオ技術など開発への加担をEL掲載の主な理由としており、その他は米国製品をイランの軍事プログラムに迂回輸出していたことを指摘している。ジーナ・レモンド商務長官は声明で「中国は民族的・宗教的マイノリティーを抑圧するためにバイオ技術などを利用している。米国は安全保障に反するかたちで医学やバイオ技術の革新を支える米国製品が使用されることを許さない」と、中国政府による人権侵害を問題視する発言をしている。

(注)米国市民、永住者、米国の法律または米国内の管轄権に基づいて組織された事業体(外国支社も含む)や米国内にいる個人が含まれる。

(磯部真一)

(米国、中国、ジョージア、マレーシア、トルコ)

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