経営者連合会が新たな包括的市場経済モデルの構築に向けて国民に呼び掛け

(メキシコ)

メキシコ発

2021年12月01日

メキシコ経営者連合会(COPARMEX)は11月29日、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領の就任3周年(12月1日)を前に、メキシコにおける経済社会格差に配慮し、包括的な開発を伴う市場経済の新たなモデルを確立するための国民的な議論を呼び掛けた(COPARMEX2021年11月29日プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同呼び掛けを行った背景には、AMLO政権下では、企業が現政権の進める社会的変革(第4次変革)の抵抗勢力として位置付けられ、前政権まで続いた新自由主義的な政策の下で私腹を肥やしてきたというようなレッテルが、大統領や与党議員によりしばしば貼られてきたことがある。「企業=大統領と庶民の敵」といった対立構造が形成され、企業が投資を行い雇用を生み出す重要な存在として捉えられていない向きがあるため、同対立構造の解消を狙ったものだ。

COPARMEXは「経済と政治は調和がとられなければならないが、不幸なことに今日存在するのは緊張と分断化された社会だ」とし、「わが国で最初に再建しなければならないのは本質的なこと、つまり、われわれは全てメキシコ人であり、直面している課題を乗り越えるために一致団結する必要があるという本質に根差した国民の団結だ」と強調する。

財政規律の維持は評価も、現政権下の経済・社会的達成は不十分と指摘

COPARMEXは、AMLO政権が過去3年間で財政規律を維持し、債務を増加させなかったことについては評価しているが、逆に厳しい経済環境下で個人や零細企業に対する支援がほとんどなかったことが大きなダメージを与え、以前は中間層だった約550万人の国民が現在は貧困状況に置かれているとし、経済・社会的格差に配慮しつつも、企業活動や経済活動を促進し、雇用を生み出すための新たな経済モデルの構築を国民全体の議論の下で進めようと呼び掛けている。

COPARMEXが提案する新たな市場経済モデルの前提としては、20項目が挙げられている(添付資料参照)。社会的側面に強く配慮した内容になっているものの、経済界が常に指摘してきたAMLO政権下における法的安定性や透明性の欠如、国営企業の過度な優遇をめぐる問題を意識し、それらを改善するようなかたちでの前提が盛り込まれている。20の前提について今後、国民的な議論を進め、2022年には具体的なアクションプランを作成するとしている。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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