日本郵船、タタ・スチールとバイオ燃料による試験航行を実施

(インド)

ニューデリー発

2021年12月08日

日本郵船は11月22日、インドの大手製鉄メーカーであるタタ・スチール向けの貨物輸送で、バイオ燃料を使用した試験航行を実施したことを発表した。同グループ会社タタ・エヌワイケイ・シッピングが運航するばら積み船が11月14日にシンガポール港でバイオ燃料を補油して航海を開始し、11月20日にインド北東部ダムラ港に到着した。

写真 今回試験航行を行ったばら積み船「フロンティアスカイ」(日本郵船提供)

今回試験航行を行ったばら積み船「フロンティアスカイ」(日本郵船提供)

日本郵船グループによるバイオ燃料での試験航行は、全世界で今回が3回目だ。過去2回はBHPビリトン、アングロ・アメリカンといずれも世界的な資源メジャーの輸送だったのに対し、今回は初めてメーカーからの協力の下での試験航行となった。日本郵船に11月25日にヒアリングしたところ、タタ・スチールはサプライチェーンにおける海上輸送での脱炭素化に関心を持っており、過去2回の取り組みを知った同社から、バイオ燃料を使った試験航行への要望が寄せられたことがきっかけとなった。日本郵船としては、化石燃料の利用を前提とした船舶にバイオ燃料を使うことで、その安全性や温室効果ガス(GHG)の削減効果をさらに検証したいと考えていたことから、今回の実現に至ったという。

バイオ燃料は、燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出するものの、原料となる植物は二酸化炭素を吸収してバイオマスを再生産するため、直接燃焼における二酸化炭素排出量は実質ゼロとみなされる。世界でカーボンニュートラルが注目を集める中、サプライチェーン排出量(注)においても脱炭素化に向けた動きが活発化している。

今回、日本郵船が使用したバイオ燃料は、豊田通商のシンガポール子会社で、船舶用燃料油を販売する豊田通商ペトロリアムから供給を受けたものだ。日本郵船によると、このバイオ燃料は廃食油を原料としており、廃棄処分予定とされていたものを新たに環境に配慮して再生・利用したものであることから、循環型経済にも対応しているという。

ただし、バイオ燃料の本格的な実用化には課題も多い。一般的に関連インフラがまだ十分整っていないことから、従来の化石燃料に比べて補給できる場所が限られている。このため、どこでどの程度の量の燃料を確保するかをあらかじめ決定しておく必要がある。また、化石燃料と比べて高価なことから、コスト競争力の担保も不可欠だ。日本郵船としては、タタ・スチールのように関心を持つ企業・業界への働き掛けを進めたいとしている。

(注)原材料調達・製造・物流・販売・廃棄など、一連の事業活動から発生する温室効果ガスの排出量のこと。事業者自らによる温室効果ガスの直接排出であるスコープ1、他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出であるスコープ2、スコープ1・スコープ2以外の間接排出であるスコープ3から成る。バイオ燃料を使った輸送において、その荷主となるメーカーはスコープ3に位置付けられる

(高際晃平)

(インド)

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