11月の生産は増加、新型コロナ感染拡大も規制強化は限定的

(ベトナム)

ハノイ発

2021年12月09日

11月のベトナムの生産活動は伸びを見せた。ベトナム統計総局が発表した同月の鉱工業生産指数(IIP、注1)は159.4だった。前月比は5.5%上昇し、3カ月連続のプラスとなった(添付資料図参照)。前年同月比は5.6%上昇し、5カ月ぶりにプラスに転じた。英国の調査会社IHSマークイットが発表したベトナムの11月の製造業購買担当者景気指数(PMI、注2)は52.2だった。前月から連続で指数が50を上回り、製造業の景気が上向いている。

ベトナムの新型コロナウイルス感染者数は、10月中旬に1日当たり3,000人ほどまで減少したが、その後右肩上がりに増えており、12月上旬は1万4,000人ほどで推移している。首都ハノイ市でも12月3日に1日当たりの感染者数が過去最高になるなど、多くの地域で感染リスクが高まっている。一方、ワクチン接種率は1回目が人口の約75%、2回目完了が約56%と、日々上昇している。ベトナム政府は10月11日に政府決議128号(128/NQ-CP)を発出し、「ウィズ・コロナ」期のニューノーマル(新常態)に向けて、新型コロナウイルス対策の厳格な社会隔離措置を見直した(2021年10月19日記事参照)。これに従い、感染者が出てもできる限り操業を止めない方針が全国で取られたため、生産活動が軌道に乗るようになった。

一方、さらなる感染拡大に警戒も高まっている。ベトナム南部を中心に、感染を危惧して労働者の職場復帰が遅れており、増産の妨げとなっている。日系企業からは、今後さらに感染状況が悪化した際に、政府が規制を再度強化するなど、通常どおりに操業を続けられるか懸念する声も聞こえる。そのほか、世界的な輸送費上昇や原材料確保の問題が引き続き企業の重荷となっている。

なお、11月の鉱工業生産指数を業種別にみると、電子部品(前月比:0.8%上昇、前年同月比:11.6%上昇)やアパレル製品(3.2%上昇、13.5%上昇)、靴(12.4%上昇、7.3%上昇)は好調だ。自動車(5.9%上昇、16.2%低下)、家電製品(6.6%上昇、12.2%低下)、家具(12.1%上昇、6.5%低下)は生産が回復に向かっているが、前年同月よりは低い水準にある。

(注1)鉱工業生産指数は、鉱工業の生産を評価する指数で、2015年の生産量を基準(100)に算出される。

(注2)製造業の購買責任者を対象に、生産高や新規受注、在庫水準、雇用状況、価格などの状況を評価する指数。0から100の間で変動し、50を超えると「前月比で改善や増加」、50未満は「前月比で悪化や減少」を表す。

(庄浩充)

(ベトナム)

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