北欧最大のスタートアップイベント「スラッシュ」、2年ぶり開催

(フィンランド)

ロンドン発

2021年12月10日

北欧最大のスタートアップイベント「スラッシュ」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが12月1、2日にフィンランドのヘルシンキで開催された。前年は新型コロナウイルス禍で中止となったため、2年ぶりの開催。感染予防対策として、全体の入場者数は前回開催時の約3分の1の8,800人に縮小されたものの、対面での商談機会を待ち望んでいたスタートアップ創設者(約3,200人)や投資家(1,700人)のほか、次世代の起業家となり得る学生ボランティアなどが参加し、会場は前回以上ともいえる熱気に包まれた。

会場内では、欧州各国のスタートアップのほか、地元有力大学のヘルシンキ大学やアアルト大学などが製品や技術シーズの展示を行い、分野もSaaS(サービスとしてのソフトウエア)やドローン、モビリティー、サステナビリティー、セキュリティー、量子コンピューティングなど多岐にわたった。その中でも、会期を通じて参加者の注目を集めたのが医療・ヘルステック分野だ。会期中に開催されたピッチコンペティション「スラッシュ100」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのファイナリストはいずれもこの分野の企業で、生体内に近い状態で細胞培養と観察を可能とするデバイスを開発するビトロスコープ(Vitroscope外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、女性のホルモンバランスを測るアプリを開発するホルモナ(Hormona外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、ヘルパーのタスクや家事、家計を管理するアプリを開発するヘルピー(Helppy外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の3社が選出された。2日目に開催された決勝ピッチの結果、ホルモナが最優秀賞に輝いた。大企業では、英国製薬大手アストラゼネカが大型ブースを出展、日本を含め同社の各地域のスタートアップ協業担当者が参加し、協業先スタートアップの発掘や面談を活発に行った。

写真 豪華スピーカーが登壇し盛り上がるメインステージ(ジェトロ撮影)

豪華スピーカーが登壇し盛り上がるメインステージ(ジェトロ撮影)

ジェトロ、サステナブルファッションをテーマにジャパンブース出展

ジェトロは日本と北欧間の企業連携の促進を目指し、北欧でも関心の高いサステナブルファッションに関連する日系スタートアップ2社とともに、ジャパンブースを出展した。快適で多機能なスマートウエアを開発するハップ(hap外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)最高経営責任者(CEO)の鈴木素氏は参加後、「挑戦する側と応援する側も失敗を恐れない積極性を強烈に感じた。日本では世界中の起業家や投資家が集結する場が少なく、こうした場への参加は非常に有意義」とコメントした。リサイクル可能な防水透湿テキスタイルを開発するアンフィビオ(Amphibio外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)CEOの亀井潤氏は「スラッシュの運営チームやボランティアの人が弊社技術に興味を持ってくれ、ジェネレーションY-Z(注)にサステナビリティーのテーマがより刺さることを肌で感じた」と評価した。両社とも、海外投資家やアパレルブランドなど協業候補先とのコンタクトも獲得し、今後継続して商談を行う予定だ。

写真 ジャパンブース内のハップ社の製品展示(ジェトロ撮影)

ジャパンブース内のハップ社の製品展示(ジェトロ撮影)

写真 ジャパンブース内のアンフィビオ社の製品展示(ジェトロ撮影)

ジャパンブース内のアンフィビオ社の製品展示(ジェトロ撮影)

スラッシュの主催者は開催指針として「世界を変える起業家を助ける」を掲げており、特に社会課題の解決を目指す創業初期の日系スタートアップにとって、スラッシュは今後も多くの刺激と人脈を得られる機会となるだろう。

(注)ジェネレーションYは、おおむね1980年代序盤から1990年代中盤までに生まれた世代。ジェネレーションZは1990年代中盤から2000年代終盤までに生まれた世代を指す。

(伊藤吉彦)

(フィンランド)

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