インフレの抑え込みに苦悩するパキスタン政府

(パキスタン)

カラチ発

2021年11月26日

パキスタン石油ディーラー協会(PPDA)は11月24日、政府が毎月決めるガソリン公定価格では利益が少な過ぎるとして、加盟ガソリンスタンドの全国ストライキを25日から開始すると発表した。これにより、各地のガソリンスタンドは、一部の大手石油流通系スタンドを除いて休業することとなり、ガソリンを求める自動車やバイクで大変な混雑となった。

写真 カラチ市内の混雑するガソリンスタンド(ジェトロ撮影)

カラチ市内の混雑するガソリンスタンド(ジェトロ撮影)

2021年10月の都市部のガソリン等燃料価格は、前年の同じ月に比べて27.6%上昇。国際的な原油価格の上昇に加えて、パキスタン・ルピーの対ドルレートが、直近7カ月で1ドル=約154ルピー(4月26日)から約175ルピー(11月24日)にまで約13.6%下落したことも響いた。公共交通機関の発達していないパキスタンでは、バイクは庶民の足で、ガソリンの高騰は懐を直撃する。

ガソリンだけでなく、原油・液化天然ガス(LNG)、食料、化学品、機械など幅広く輸入に依存するパキスタンではあらゆるものが値上がりし、10月の全国消費者物価指数(CPI)も前年同月比9.2%と高い上昇率を記録した。インフレは、政府にとって頭痛のタネとなっている。イムラン・カーン首相は11月3日、低所得の2,000万世帯を対象に、生活に必須の食用油、小麦粉、豆類の3品目について今後6カ月間30%引きで購入できる1,200億ルピー(約792億円、1ルピー=約0.66円)規模の救済策を発表したが、根本的なインフレ対策となるかは疑問視する声も強い。

インフレと経常赤字に危機感を強めるパキスタン中央銀行(SBP)は11月19日、金融政策会合を1週間前倒しして開催し、政策金利を一気に150ベーシス・ポイント(bp、1bp=0.01%)引き上げ、8.75%とした。9月会合時の25bp引き上げと比較して大幅な引き上げになった。

2023年に総選挙を控える与党PTI政権は、インフレ高進による国民の不満を和らげつつ、輸入急増による経常赤字増大を防ぎたいものの、新型コロナウイルス禍後に急回復しつつある経済を冷やすわけにもいかず、二律背反の難しい経済運営を迫られている。

(山口和紀)

(パキスタン)

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