ブラジルの一方的な関税引き下げに対しアルゼンチンは静観

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)

ブエノスアイレス発

2021年11月18日

ブラジル経済省は11月5日、タリフラインの87%について一時的かつ例外的に関税を10%引き下げる(削減する)と発表した。この措置を規定した貿易審議運営実行委員会(Gecex)決議269/2021号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、11月5日付で官報公示された。11月12日から2022年末までの時限的措置で、新型コロナウイルス感染拡大に起因する物価上昇の緩和がその目的。

ブラジル政府は、中南米の域内経済統合を目的としたラテンアメリカ統合連合(ALADI)の創設を定めた、1980年締結のモンテビデオ条約外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます第50条d項を、関税引き下げの根拠としている。同項は「動植物、人類の生命、健康の保護を目的に条約署名国が採る措置はモンテビデオ条約の規定を妨げない」と規定している。メルコスールは1991年に締結されたアスンシオン条約に基づき設立された関税同盟だが、ALADIに基づく経済補完協定(ACE)の18番目(ACE18号)としてもALADI事務局に登録されている。すなわち、ALADIのモンテビデオ条約もメルコスールを規定する法的根拠になる、というのがブラジル政府の主張だ。

これに対し、11月6日付のアルゼンチン現地紙「インフォバエ」によれば、ブラジルの決定に対する法的有効性を疑問視する声がアルゼンチンでは上がっているが、アルゼンチン政府は特段の声明を発表していない。事前にブラジルから通知されており、かつ自動車、繊維製品、乳製品、玩具などアルゼンチンのセンシティブ品目が今回の対象から除外されていることにより、ブラジルとの関係を考慮して静観しているためだ、と報じられている(現地紙「エル・クロニスタ」11月16日)。

(西澤裕介)

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)

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