外国人向け観光ビザの発給再開

(イラン)

中東アフリカ課

2021年11月01日

イラン政府は10月23日から、新型コロナウイルス感染拡大防止のために2020年3月以降停止していた外国人への観光ビザの発給を約1年7カ月ぶりに再開した。ただし、入国の際にはワクチン接種証明書、入国前96時間以内に受けたPCR検査の陰性証明書の提示が必要となる。

今回の決定は、文化遺産・観光・手工芸省(以下、観光省)の要請に関係省庁が合意し、政府のコロナ対策本部が承認したもの。10月25日に同本部の承認を受けて同省が公表した関係省庁向けの「コロナ下の外国人観光客受け入れ指示書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」では、国内外のワクチン接種が進んでいることから、雇用状況の改善や持続可能な経済発展と外貨獲得などのため、国民の健康を守りながら外国人観光客の受け入れを再開するとしている。

国内の感染状況については、1日当たりの新規感染者数が5万人を超えた第5波のピーク(8月17日)からは大きく減少し、9月下旬以降は1万人前後で推移している。保健・治療・医療教育省の発表によると、10月31日の新規感染者数は8,427人、死亡者数は177人だった。

ワクチン接種は、8月に就任したイブラーヒーム・ライーシー大統領がワクチンの輸入と接種を最優先課題の1つに掲げて以降、接種率が上昇している。就任直後の8月9日には1回目のワクチン接種を受けたのは全人口の約15%、2回目接種は約4%となっていたが、10月31日には1回目接種は約63%の約5,262万人、2回目接種は約41%の約3,448万人となった(10月31日付イラン保健・治療・医療教育省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

イランは、米国が2018年に再開した経済制裁によって原油輸出が制限される中、数少ない外貨獲得手段の1つとして、観光産業に力を入れてきた。国連世界観光機関(UNWTO)の統計によると、2013~2017年は毎年500万人前後で推移していたイランへの外国人訪問者数は、2018年は約730万人、2019年は約911万人と増加(添付資料図参照)。アリー・アスガル・ムーネサン前観光相によると、2019年の観光収入はGDPの2.8%の117億ドルに達した。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大後の外国人観光客の受け入れ停止に加え、国内でも営業制限や移動・交通制限が行われたことから、観光省によると、2021年3月までの約1年間の観光産業の損害額は320兆リアル(約76億ドル、公定レート1ドル=4万2,000リアル)、失業者は4万4,000人と、観光産業は新型コロナによって大きな打撃を受けた産業の1つとなっていた。

(稲山円)

(イラン)

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