国連機関がアラル海地域で「一村一品運動」を初展開

(ウズベキスタン、日本)

市場開拓・展示事業課

2021年11月09日

国連開発計画(UNDP)と国連人口基金(UNFPA)は11月3~5日、ウズベキスタン北西部のカラカルパクスタン自治共和国で、中小企業支援プロジェクトとして「一村一品運動(注1)の基礎」研修を初めて実施した。本プロジェクトは日本政府による財政支援のもと実施されたもので、アラル海地域の女性や若者45人を対象にスキルアップ研修や起業支援を行い、地域の収入向上を目指す。

アラル海は、半世紀前まで世界4位を誇る内陸湖だったが、長年にわたる綿花などの灌漑農業と気候変動によって湖面積は10分の1にまで減少した。近年は塩分の上昇によって魚が一時死滅し、周辺地域は塩害によって砂漠化が進んだ。

UNDPとUNFPAはウズベキスタン政府協力の下、2020年1月から「アラル海地域における環境破壊による健康、環境および経済不安に対する地域社会の復元力構築」プログラムを開始し、2022年6月までに健康被害の改善とともに、海外への出稼ぎ労働者からの送金に頼る不安定な収入の解消に道筋をつけたい考えだ。

UNDPウズベキスタン国際ボランティアの金子浩士氏は、研修後について「カラカルパクスタンの農業従事者が新たな発想を身に付け、ビジネス拡大と事業の安定化に向けた活動を続けてほしい。将来的には、国外市場としてジェトロが成田国際空港と関西国際空港で運営している一村一品マーケット(注2)への進出も視野に、日本でオンラインや実店舗での販売もしたい」と意気込みを語った。

国際協力機構(JICA)の草の根技術協力事業でウズベキスタンの「養蚕農家の生計向上」と「辺境農村における副業収入向上」の2つの支援プロジェクトに参加した経験を持つ、日本ウズベキスタン協会理事長で東京農工大学農学研究院の川端良子准教授は、技術協力では「参加者の中から熱心な方を見つけること。主な販売先であるウズベキスタン国内の取引先を一緒に探し、条件交渉も手伝ってあげること。輸送コストがかかるので、海外でも高い小売値が付けられる商品を選ぶことが大切だ」と述べた。

他方、日本でウズベキスタン商品などを輸入販売しているジャパントレーディンググループのユヌス・イシャンクロフ取締役は、日本市場への参入について、ドライフルーツを例に「日本の消費者の好みに合わせた味、商品パッケージの開発、添加物規制への対応、石や虫の混入といった衛生・品質の管理などをクリアすることが必要だ。日本とウズベキスタン双方の事情が分かっている専門家による指導が成功の鍵」との見解を示した。

写真 OVOP+1のスタッフによるレクチャー(左写真)、キルギスでの開発商品を確認する参加者(中央写真)、ボザタウの研修参加者・金子浩士氏は前列右から2人目(右写真)(UNDPウズベキスタン提供)

OVOP+1のスタッフによるレクチャー(左写真)、キルギスでの開発商品を確認する参加者(中央写真)、ボザタウの研修参加者・金子浩士氏は前列右から2人目(右写真)(UNDPウズベキスタン提供)

(注1)一村一品運動は、1979年に大分県の平松守彦県知事(当時)が提唱した地域振興運動。

(注2)一村一品マーケットは、日本政府が2005年12月のWTO香港閣僚会議の際に、開発途上国支援策として発表した「開発イニシアティブ」を受けて2006年3月から開設。

(皆川幸夫)

(ウズベキスタン、日本)

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