アイルランド政府、2022年度予算案を発表
(アイルランド)
ロンドン発
2021年10月21日
アイルランド政府は10月12日、2022年度の予算案を発表した。総額は47億ユーロ。同発表で政府は、社会福祉、住宅、健康、教育などの分野で支出を増やす一方、労働者の税負担の軽減も掲げた。
政府は「新型コロナ禍」において、3年間で480億ユーロ以上を投入するとしており、これまで、パンデミック失業手当(PUP)、被雇用者給与補助スキーム(EWSS)、コロナ制限支援制度(CRSS)を通じて、約175億ユーロが個人、企業などに支給されたとしている。政府は今後、「新型コロナ禍」から、公共サービスと生活水準の回復、財政の立て直しの段階に入るとしている。特に気候変動分野では、炭素税を増税。2030年まで二酸化炭素排出量1トン当たり7.5ユーロ上乗せされ、33.50ユーロから41.00ユーロへと引き上げられた。炭素税で得られた資金は、児童手当、1人暮らし手当、燃料手当という社会福祉活動への投資に使われる。
産業界からは評価の声
アイルランド財政諮問委員会(Ifac)は10月12日、「政府は経済を、今後数年間の借り入れと債務比率を減少させる、より慎重な方向に導いていている」との声明を出した(「アイリッシュ・タイムズ」紙10月13日)。
アイルランド企業雇用者連盟(Ibec)のダニー・マッコイ最高経営責任者(CEO)は12日のIbecのプレスリリースにおいて、2022年度の予算は、「新型コロナ危機」から脱却する際の赤字を削減し、重要分野への投資を増やすことで、より平常な予算への回帰と表現。賃金補助の延長や、育児費用の削減を目的とした施策などを評価している。
アイルランド税務協会のカレン・フローリー会長は「経済の回復には企業ごとの差があり、感染拡大前の取引水準に戻るのに苦労している企業があることは周知のとおりだ。被雇用者給与補助スキーム(EWSS)の継続と雇用者社会保険(PRSI)の軽減税率の決定は、これらの企業にとって非常に有益なものとなるだろう」と歓迎した。
(島村英莉、尾関康之)
(アイルランド)
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