新たな銀行類型「デジタル銀行」の数は6行で維持

(フィリピン)

マニラ発

2021年10月11日

フィリピン中央銀行(BSP)のベンジャミン・ディオクノ総裁は10月4日、フィリピンで新たに導入する「デジタル銀行」(注1)について、8月31日をもって設立の申請を締め切り、既にデジタル銀行のライセンスを付与した6行に対してのみ運営を認める方針を明らかにした(「ビジネス・ワールド」紙10月5日)。

デジタル銀行の数を制限することで、BSPは綿密に金融監督を行うことができるとともに(注2)、これらのデジタル銀行間、あるいは既存の銀行との間での適度な市場競争が行われるとディオクノ総裁は説明する。

デジタル銀行設立のライセンスを得たのは以下の6行。

  1. ウノバンク:シンガポールのフィンテック企業ディジバンク・アジアの子会社。
  2. ユニオン・デジタル・バンク:アボイティス財閥系のユニオン・バンク・オブ・ザ・フィリピンの子会社。
  3. ゴータイム:ゴコンウェイ財閥と、シンガポールに本拠地を置くデジタル金融グループ、タイムの合弁会社。なお、タイム傘下のタイムバンクは、南アフリカ共和国でデジタル金融サービスを展開している。
  4. 海外フィリピン人銀行:国有大手銀行フィリピン不動産銀行の子会社。デジタル銀行へと事業転換する。
  5. トーニック・バンク:フィリピンの地方銀行(2019年に登録)。デジタル銀行へと事業転換する。
  6. マヤ・バンク:フィリピンのフィンテック企業ボイジャー・イノベーションの子会社。なお、ボイジャー・イノベーションは、フィリピンで利用が拡大している電子ウォレットサービス「ペイマヤ」を運営する。

国内にデジタル銀行が設立されることで、フィリピンでの金融包摂(注3)が進展すると同時に、オンライン決済の普及につながることをBSPは期待している。

(注1)デジタル銀行とは、物理的な支店を持たずに、金融商品・サービスをデジタルな方法によって提供する銀行の類型を指す。BSPは2020年12月、同類型を新たに導入した。

(注2)BSPは、中央銀行と金融監督当局の役割を兼ねている。

(注3)ファイナンシャル・インクルージョン。国民全員が基本的な金融サービスを受けられること。

(吉田暁彦、サントス・ガブリエル)

(フィリピン)

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