フィリピン政府、2023年の商業衛星打ち上げを発表

(フィリピン)

マニラ発

2021年10月22日

フィリピン大統領府は10月13日、フィリピンが2023年に新たな商業衛星の打ち上げを予定していることを発表した。同衛星は、「MULA(Multispectral Unit for Land Assessment)」と名付けられており、フィリピン宇宙庁(PhilSA)が開発を進めている。MULAに搭載されるカメラは、120キロの範囲で、5メートル解像度で対象を識別することが可能だ。フィリピン政府は、MULAを駆使して、同国の通信状況を改善させるとともに、MULAから得られるデータを災害管理や農業へ活用することを狙っている。

農業分野については、衛星データを利用することで、農作物の栄養状態や生育状況、ストレス要因などを分析することが可能となる。また、土地の使用状況についても分析可能、と同政府は説明している。

フィリピン国内の通信環境が改善されることについて、金融産業への便益も大きいとの見方がある。フィリピン中央銀行(BSP)は10月14日、衛星通信技術について、フィリピンでの金融包摂(注)やデジタル金融の普及を促進させる可能性があると発表した。BSPは、特にインターネットへの接続が進んでいない僻地(へきち)で、衛星通信が重要な役割を果たすと説明する。これらの地域では、これまで低所得層を中心に金融サービスを十分に享受できていなかった。衛星通信によって、新たにインターネットへのアクセスが可能になることで、金融機関はATMなどのデータ通信を必要とする金融サービスを僻地で展開することが可能になる。加えて、国民IDを利用したオンライン上での本人確認システムへの通信接続を可能とすることにより、これまで金融サービスにアクセスできなかった地域やコミュニティでイノベーティブなデジタル金融サービスの利用が進展するだろうとBSPは指摘した。

(注)ファイナンシャル・インクルージョン。国民全員が、基本的な金融サービスを受けられること。

(吉田暁彦、サントス・ガブリエル)

(フィリピン)

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