欧州中小企業、景況感は大幅回復も、原材料価格上昇など新たな不安

(EU)

ブリュッセル発

2021年10月18日

欧州中小企業連合会(SMEunited)は10月14日、2021年秋の報告書「EU同業組合・中小企業バロメーターPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(EU Craft and SME Barometer)」(注1)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同報告書によると、SMEunitedの会員団体が行った調査に基づいて算出した、企業の景況感を示す独自の指標「中小企業ビジネス環境インデックス」(注2)は76.1ポイントだった。2007年以降で最低となった2020年秋の54.6ポイント、その次の回の2021年春の59.8ポイントから大幅に回復した。今回は欧州の新型コロナウイルス感染第3波が収束した後の2021年5~8月に集めたデータを基に算出され、SMEunitedは新型コロナウイルス関連の規制の緩和やワクチン接種計画の進展が中小企業の経済活動の急速な回復につながったとした。

しかし、SMEunitedには中小企業にはロックダウン措置の影響を大きく受けたサービス業に属する企業も多く、欧州経済全体の中でみると、引き続き厳しい状況に置かれていると指摘した。また、調査結果を見ると、中小企業にとって今後の不確実性が増しているとし、その要因として「物資不足」と「エネルギーと原材料価格の上昇」を挙げた。特に製造、建設部門の企業で生産に必要な物資の価格の上昇が継続し、サプライチェーンが混乱するのではないかという懸念がある。また、多くの中小企業が新規雇用に意欲を持っているが、人材不足を訴える企業も増えており、採用計画が進まない可能性もある。

SMEunitedは、こうした不確実性を乗り切るためには、欧州および各国レベルでの政策はサプライチェーンと価格の安定化に傾注すべきで、そのためにはデジタル化とグリーン化を目的とした投資の拡大と改革を十分なバランスを取りながら拡大させることが必要だと訴えた。

(注1)SMEunitedが年2回公表するもので、会員団体が年に2~4回実施する調査の結果に基づく。欧州各国の中小・零細企業12万社に質問票を送付し、3万社から回答を得ている。対象部門は製造と建設、商業、個人向けサービスで、事業の全体的な状況や売上高、雇用など6分野について質問したもの。

(注2)事業全体の状況に関して、現況と今後の見通し双方について、前向き(Positive)もしくは否定的ではない(Neutral)とした回答の総数の平均を用いて算出。

(滝澤祥子)

(EU)

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