3党による「信号機連立」協議進む、産業界は次期政権に競争力強化政策を期待

(ドイツ)

ベルリン発

2021年10月15日

ドイツ連邦議会選挙(総選挙)(2021年9月28日記事参照)の後、連立政権を樹立するための連立協議が間を置かず開始された。現在は、第1党となった中道左派の社会民主党(SPD)、環境政党の緑の党(Grünen)、中道リベラルの自由民主党(FDP)の3党による「信号機連立」(注1)と呼ばれる連立が有力視される。3党は10月7日に開始した予備的な協議を経て、個別具体的な政策に関する連立交渉へ進むか否か、15日に結論を出すことで合意した。

産業界の次期政権に対する要望や業界のポジションも次第に明らかになっている。主要な産業団体によるコメントは以下のとおり。

○ドイツ産業連盟(BDI):次期政権に対する要望書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを10月8日に発表し、26項目について提言。今後10年が近代化と投資におけるドイツの先駆的な役割を決定付けるとして、具体的には、企業の投資促進と増税回避、商品・サービスに関する重要な技術の戦略的主権の強化、スタートアップへの資金提供の強化、行政の許認可手続きの簡素化、競争力のあるエネルギー価格などの項目に関する主張をまとめた。また対外経済政策は、大西洋横断的な貿易投資パートナーシップの促進と中国に対して目に見えるかたちで自己主張ができる、強力な欧州連携がドイツに必要と強調。

○ドイツ商工会議所連合会(DIHK):9月29日に声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表。企業が直面している最重要課題は、デジタル化、気候保護、熟練労働者の不足と指摘。会員企業へのアンケート調査結果PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、次期政権の最重要事項について、61%が「デジタル化の推進」、41%が「行政サービスの改善と迅速化」と回答した。

○ドイツ機械工業連盟(VDMA):カール・ハエウスゲン会長は、経済誌「ビルトシャフツボッヘ(WirtschaftsWoche)」(10月6日)のインタビューで、「ビジネス界はキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)に失望」しており、「今のところ、信号機連立がより良い解決策と確信している」とした。信号機連立については、高額所得者の所得税率引き上げや富裕税の復活、そして相続税の増税を行わないとするFDPに期待。

○家族経営者協会(Die Familienunternehmer):家族経営の企業は、長期的な雇用を確保するため、競争力のある環境を形成できる政策を期待。債務ブレーキ(注2)の再適用、年金制度改革、行政手続きの簡易化などを要求(地方紙「ライニシェポスト」10月7日)。

産業界は競争力強化を図る改革を求めており、連立協議での経済政策の方向性に注目している。

(注1)ドイツでは各政党がイメージカラーを定めている。SPDが赤、CDU/CSUは黒、緑の党は緑、FDPは黄。「信号機」はSPD(赤)、緑の党(緑)、FDP(黄)の組み合わせを表す。

(注2)財政の均衡を義務付け、GDPの0.35%を超える財政赤字(新規債務)を禁じるドイツ基本法(憲法)上の規定。現在は、「新型コロナ禍」対応のため、債務ブレーキは適用されていない。

(中村容子)

(ドイツ)

ビジネス短信 3f6994cc250df158