営業規制の完全撤廃など経済活動の正常化が加速

(スペイン)

マドリード発

2021年10月12日

新型コロナウイルスワクチンの接種率が既に人口の8割近くに達しているスペインでは、10月1週目に直近14日間の10万人当たり新規感染者数が2020年7月以来15カ月ぶりに50人を下回り、政府が「ニューノーマル」(新しい生活様式)の指標とする25人以下が視野に入ってきた。

マスク着用義務は継続、ワクチン接種証明書提示義務は限定的な適用

2021年夏のデルタ株感染拡大(第5波)の収束傾向に伴い、9月29日には保健当局がプロサッカーリーグの観客収容制限を解除。また、多くの自治州で規制緩和が進んだ。マドリード州は10月に入り、飲食店から商業、スポーツ、文化施設、ディスコやナイトクラブなどの夜間娯楽施設まで、あらゆる施設の営業時間と収容制限をいち早く完全撤廃した。10月2週目にはバレンシア州やバスク州など7州がこれに続き、スペインの人口の半数が規制から解放された。一方、40歳以下の新型コロナワクチン接種率が低いカタルーニャ州では収容制限が一部続くなど、州により規制緩和のスピードにばらつきがある。

学校などを含む公共スペースでのマスク着用義務と社会的距離の確保は、引き続き全国的に適用され、当面解除の予定はない。ワクチン接種証明書の提示義務は、現時点ではカタルーニャ州など一部の州の夜間娯楽施設の入場者や、ガリシア州のサンティアゴ巡礼路沿い公営宿泊施設の宿泊客のみを対象とした限定的な実施となっている。

ビジネス活動の正常化も加速している。10月5日から7日にかけてマドリードで開催された大型スタートアップイベント「サウス・サミット」は、2年ぶりのリアルでの開催となった。同イベントには、国王フェリペ6世とペドロ・サンチェス首相が参加し、新型コロナウイルス感染拡大以前並みの2万2,000人以上の来場者が訪れ、「ニューノーマル」を象徴するイベントとなった。

高齢者へのブースター接種はインフルエンザワクチンと同時接種

感染第5波は主に10~20代の感染急増で、新型コロナワクチン接種率がほぼ100%の高齢者のブレークスルー感染は低く抑えられている。欧州医薬品庁(EMA)が10月4日に3回目のワクチン接種となるブースター接種に関する勧告を出したことを受け(2021年10月5日記事参照)、保健当局は70歳以上の層へのブースター接種を推奨すると決定した。各州で10月末以降、インフルエンザワクチンの接種事業と同時に実施される見通し。また、11歳以下の層への新型コロナワクチン接種については、カロリーナ・ダリアス保健相が10月8日、「年末にもEMAの決定があり、検討に入れるだろう」と述べた。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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