ハリス米副大統領がベトナム訪問、新型コロナ対策や貿易問題を協議

(ベトナム、米国)

ハノイ発

2021年09月02日

ベトナムのファン・ミン・チン首相は8月25日、ハノイ市内で米国のカマラ・ハリス副大統領と会談した。経済や安全保障での2国間連携を強化したほか、米国から新型コロナウイルス対策の追加支援を得た。一方、米国に対しては、ベトナムとの貿易赤字の是正に応じる姿勢を示した。チン首相は24日に駐ベトナム中国大使と会談しており、中国への配慮も見せた。

ハリス副大統領は8月24日から26日にかけてベトナムを公式訪問した。両国の外交関係樹立以来、現役の米副大統領のベトナム訪問は初めて。ハリス副大統領は新型コロナウイルス対策支援として、ファイザー製ワクチン100万回分の供与を発表した(注1)。コバックス・ファシリティーを介して供与済みのモデルナ製ワクチンと合わせると、米国の支援は600万回分に達する。米国の国際開発庁(USAID)と疾病予防管理センター(CDC)は、新型コロナウイルス対策事業に追加で2,300万ドルの支援を表明。同支援額は累計で4,400万ドル近くに及ぶ。また、東南アジア地域を管轄する米国CDCの統括拠点をハノイ市内に開設した。

貿易面では、米国がトウモロコシや小麦、豚肉製品に対する関税引き下げを要求し、ベトナムが前向きに検討することで合意した。ベトナムは米国の農産物にとって7番目に大きな輸出市場(2020年の輸出額は33億ドル)で、輸出拡大が期待される。また、ベトナムは米国にとって中国、メキシコに次ぐ貿易赤字国になっており、貿易赤字の是正措置にもつながる。

そのほか、両国は気候変動対策や開発支援、人権、戦後支援、安全保障、2国間関係強化、宇宙開発、高等教育支援での連携も確認した。

ベトナムは中国への配慮も、米中からワクチン獲得

チン首相は24日、ハリス副大統領の到着前に駐ベトナム中国大使とも会談した。中国製のワクチン追加供与200万回分に謝意を示すとともに、ベトナムは特定の国と協調して他国に対抗することはないと述べた。米中対立が顕在化する中、ベトナムは米国との関係強化を図りつつも、中国への配慮を見せたかたちだ。同時に、ワクチン調達が十分でない中(注2)、米国と中国の両国から追加のワクチンを獲得した。

(注1)8月25日から27日までに106万5870回分がベトナムに到着した。米国は超低温冷凍庫77台も提供する。

(注2)ワクチンは8月28日までに1,699万9,888人(総人口の17%)が1回目を接種、243万1,205人(2.5%)が2回目を接種。

(庄浩充)

(ベトナム、米国)

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