自動車産業向けの新たな税制優遇措置の法案を国会に提出
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2021年09月10日
アルゼンチン政府は8月12日、自動車・自動車部品およびバリューチェーン振興に関する法案を下院に提出した。自動車業界と政府は、自動車産業のバリューチェーンを振興するための法律を制定することで2020年12月に合意しており、3月1日に招集された2021年通常国会の冒頭、アルベルト・フェルナンデス大統領は、同法案を通常国会に提出する6つの経済活性化のための法案の1つに挙げていた(2021年3月9日記事参照)。
法案では、アルゼンチンがメキシコやブラジルと締結する自動車協定によりメキシコ原産の自動車は2022年に、ブラジル原産の自動車は2029年に無関税輸入枠が撤廃され輸入が自由化されることと、メルコスールがEUやその他の第三国・地域と締結する自由貿易協定によって自動車の関税が撤廃されることの2つを「アルゼンチンの自動車産業の脅威」として挙げている。こうした国際的な競争に対応するための施策として、自動車産業の新規投資強化プログラムの導入とモビリティ研究所の設置が法案に盛り込まれた。
自動車産業の新規投資強化プログラムは、自動車、自動車部品製造会社による新たな生産プロジェクトに対して税制優遇措置を与えるものだ。対象となるのは完成車および自動車部品に関する新たな生産プロジェクトで、工業生産・開発省傘下の産業・知識経済・対外貿易管理局の認可を受ける必要がある。生産品目ごとに適用条件と最低国産化比率(CMN:Contenido Minimo Nacional)が設定されて(添付資料表1参照)おり、プロジェクトの承認から3年以内に必要な投資を実行して生産を開始する必要がある。期限の延長は可能だが、延長された期間を含めて2029年12月31日までに生産を開始しなければならない。認可を受けた生産プロジェクトは、付加価値税の還付期間の短縮、加速度償却(資産の償却ペースの短縮)、2031年12月31日まで輸出税を無税とする、といった税制優遇措置を受けることができる。
新たに設置するモビリティ研究所(Instituto de Mobilidad)は、自動車産業の競争力強化、発展と雇用創出を目的とした公的組織で、国の自動車政策の立案、自動車産業の課題分析などを担う(添付資料表2参照)。
今後、法案は下院と上院において審議され、法案の内容が見直される可能性があるが、自動車産業が求める新たな優遇措置の導入に向けて動き始めた。
(西澤裕介)
(アルゼンチン)
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