米・フォードがインド市場戦略を「再構築」、車両生産を順次終了

(インド)

アーメダバード発

2021年09月24日

米国自動車大手フォードは9月9日、インドにおける車両製造の中止を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。一方で、インド南部タミル・ナドゥ州チェンナイを拠点とする「フォード・ビジネス・ソリューションチーム」を大幅に拡大する意向だ。同チームを同社改革のための「Ford+」計画に貢献させ、今後は世界戦略車や電気自動車(EV)仕様のスポーツ用多目的車(SUV)をインド市場に投入する方針。「インド事業の再構築を行う」ことで、持続的に価値創造が見込める分野に経営資源を集中する。

同社は「インド市場で過去10年間に20億ドル以上の累積損失を計上、2019年には8億ドルの資産評価損を計上した」という。その背景には、長期の累積損失、業界全体の恒常的な生産過剰、自動車市場の伸び悩みなどがあった。この間、パートナーシップの再考、プラットフォームの共有、他のOEMとの委託生産、製造工場の売却可能性検討などによる収益向上を試みた上で、今回の決定に踏み切ったとしている。同社は、25年前にインドに進出したが、乗用車市場でのシェアは2%程度と低迷してきた。

同社声明では、フォード・インドは、インド西部グジャラート州サナンド工場での車両生産を2021年第4四半期までに、チェンナイ工場での車両生産およびエンジン製造を2022年第2四半期までに終了するという。ピックアップトラック「レンジャー」の輸出用エンジンを生産しているサナンド工場の約500人の従業員と、部品供給やカスタマーサービスを担当する約100人の従業員は引き続き事業を継続する。

同社は今後、「フォード・ビジネス・ソリューションチーム」強化の下、ソフトウエア開発者、データサイエンティスト、研究開発エンジニア、財務・会計の専門家などに多くのチャンスが生まれる予定だという。また、Mustang Mach-Eなどの新型ハイブリッド車やEV提供のため、今後、グローバルに300億ドル以上の投資を行う計画があり、インドの消費者は長期的には恩恵を受けることになるとしている。

そのほか声明では、5都市に部品デポを維持し、ディーラー網と協力して部品・サービス体制を再構築することや、グローバル製品の部品サプライヤーやベンダーとは関係を維持するなどとされている。

サナンド地域に進出している日系製造業の中にはフォードに部品供給する企業もあり、今回の決定の影響が懸念される。

(古川毅彦)

(インド)

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