米カリフォルニア州、配送センター労働者へのノルマ制限の法案成立

(米国)

サンフランシスコ発

2021年09月29日

米国カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は9月22日、小売業配送センターの従業員へのノルマを制限する法案(AB701外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に署名し、同法は成立した。食事や休憩時間も十分に取れないなど、職業安全衛生法を順守できないほどの過度なノルマを雇用主に課された場合、従業員は達成する必要がないとするもので、新型コロナウイルス感染拡大に伴うオンラインショッピングの拡大によって配送センターの作業スピードが重視される中、労働者の安全確保のため州政府が介入したかたちだ。同法は2022年1月1日から施行される予定。

同法の条文によると、即日・翌日配送や、従業員の生産性を追跡するテクノロジーの急速な発展により、倉庫や配送センターで働く従業員の多くがノルマを課されており、分や秒単位の時間内で業務をこなすことが求められる。達成できない場合は停職や解雇などに直面し、安全ガイドラインを順守することもできず、激務から回復する時間も取れないまま、けがや病気になるリスクが高い。

同法では、特定の雇用主に対し、公正労働基準法が適用される配送センターの従業員(Non-exempt employee)を雇用する際、あるいは同法施行から30日以内に、当該従業員が行う業務量と業務完了に与えられる時間などを含むノルマを書面で示し、ノルマを達成できなかった場合に取られる雇用上の措置(停職や解雇など)についても記載することを求める。雇用主は、書面で定めていないノルマや、食事や休憩時間を取れないなど職業安全衛生法順守を妨げるようなノルマの未達成を理由に、従業員に雇用上の措置をとることを禁止される。

対象となるのは、カリフォルニア州の配送センター1カ所で100人以上、あるいは州内の配送センターで1,000人以上を雇う雇用主。従業員を直接雇用しているか、派遣会社などを通しているかは問わない。

カリフォルニア小売業協会(CRA)のレイチェル・ミシュラン会長は、この法律成立に当たり、「知事が署名したことは残念だ。現在のサプライチェーンの問題を悪化させ、カリフォルニア州民の生活費を上げ、高賃金の仕事を奪うことになる」との声明を出した。

(田中三保子)

(米国)

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