新型コロナ禍で医療情報管理のアウトソーシングサービスが急成長

(フィリピン)

マニラ発

2021年09月03日

フィリピン医療情報管理協会(HIMAP)は8月24日、同協会が開催したウェビナーで、医療情報管理のアウトソーシングサービス(注1)に対する需要拡大を背景に、同産業は2021年に5~10%の成長が見込まれると発表した(「ビジネス・ミラー」紙8月25日付)。

HIMAPは、医療情報管理のアウトソーシングサービスが成長している理由として、以下を挙げる(「マニラ・ブレティン」紙8月25日付)。

  • 先進国の医療機関で業務コストが上昇し、これら機関の利益率を圧迫した。そのため、先進国の医療機関は業務の一部をオフショアリング(注2)する誘因が発生していた。
  • 新型コロナウイルスのワクチン大量接種の実施がフィリピンへの医療関連業務のオフショアリング拡大につながった。
  • 通信環境が改善しており、インターネットサービスも安価になりつつある(アウトソーシングサービス提供のコストが低減した)。
  • 在宅勤務のような柔軟な働き方が定着しつつあり、また、国内でデジタル技術を持つ人材が豊富に供給されることで、アウトソーシングサービスの成長が促進される。

HIMAPによると、医療情報管理のアウトソーシングサービス産業は2020年に14万7,000人のフルタイム労働者を雇用し、31億ドルの収益を生み出した。同産業の規模はフィリピンのIT-BPM産業全体の10%超を占めている。 HIMAPは医療情報管理のアウトソーシングサービス産業の動向として、臨床研究やデータ解析、ライフサイエンスといった高付加価値なサービス提供も近年は拡大していると指摘した。

(注1)ITを活用した医療機関向けの業務委託サービス全般を指す。医療情報管理システムの運営・保守対応、保険料の計算・精算、各種資料作成などを請け負うサービスが含まれる。

(注2)オフショアリングとは、業務の一部もしくは全体を海外に移すことを意味する。

(吉田暁彦、サントス・ガブリエル)

(フィリピン)

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