欧州委、ワクチン研究開発支援や共同調達を実施する常設部局設置へ

(EU)

ブリュッセル発

2021年09月21日

欧州委員会は9月16日、公衆衛生上の危機に対応する欧州委の新たな部局となる「欧州保健緊急事態準備・対応局(HERA)」に関する政策文書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)と、HERAの立ち上げを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。HERAは、新型コロナウイルス危機の当初にマスクなどの医療装備の供給不足が発生し、ワクチンの確保にも難航したことを教訓に、「欧州保健同盟」の強化に取り組む欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が、臨時の対応ではなく、常設の管理体制を構築する必要があるとして、米国の生物医学先端研究開発局(BARDA)のEU版の設立を提唱していたものだ(2020年9月17日記事参照)。将来の公衆衛生上の危機に対応するために、ワクチンや治療薬、検査キット、マスクや手袋などの医療装備のEU域内での開発、生産、供給を確保することで、こうした製品の域外国への依存を軽減させる狙いがある。

HERAの活動は平時と緊急事態に分かれる。平時には、感染症の発生など公衆衛生上のリスクの早期特定、ワクチンなどの新たな医薬品の開発支援、関連業界との連携などによる緊急事態に備えた域内での生産能力と革新技術の確保、調達や備蓄能力の強化を図る。緊急事態では、EU理事会(閣僚理事会)の緊急事態認定に基づいて、緊急事態枠組みを発動させる。欧州委の委員長を議長とし、各加盟国の代表からなる公衆衛生危機委員会を設置し、迅速な意思決定を可能にするとともに、危機関連の医療装備の監視、共同調達の実施、予備施設を活用した生産拡大、生産や開発への資金提供と支援などの緊急事態措置を実施する。HERAは公衆衛生上の危機全般に対応し、医療装備の開発・生産支援、調達、供給面の権限を有することから、伝染病の分野に特化した欧州疾病予防管理センター(ECDC)や医薬品の規制当局である欧州医薬品庁(EMA)といった既存の専門機関と平時から緊密に協力を進めるとしている。

欧州委はHERAの予算として、EUの中期予算計画(MFF)と復興基金(2020年9月23日付地域・分析レポート参照)から、今後6年間で60億ユーロを拠出する予定。また、その他のEUの関連予算などを含めると総額は約300億ユーロ規模になるとした。設置時期については、専門機関ではなく欧州委内の部局として設置することから、2022年初めには本格的に活動を始める予定だ。ただし、同日発表されたHERAの緊急事態枠組みの発動メカニズムを規定するEU理事会規則案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、EU理事会による審議、採択を経る必要がある。

(吉沼啓介)

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