国会議員予備選の結果を受けて閣僚5人が辞表を提出

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年09月17日

アルゼンチンで9月15日、現職の閣僚5人と複数の政府高官が一斉に辞表を提出した。9月12日に行われた国会議員予備選挙(PASO)において与党連合「全国民のための戦線」が敗北を喫したことを受けた動きとみられる(2021年9月17日記事参照)。辞表を提出した閣僚は、内務相、法務相、環境・持続可能開発相、科学技術相、文化相。

与党連合はPASOでの敗北を受け、11月の本選挙に向けて経済政策の見直しを迫られている。与党連合の中には、新型コロナウイルス感染症のまん延による経済の落ち込みに対して財政支出が不十分だったこと、物価抑制が不十分だったことを敗北の原因の1つとする見方がある。そのため、財政とIMFとの債務再編交渉を担うマルティン・グスマン経済相、工業生産と価格統制を担うマティアス・クルファス工業生産・開発相、サンティアゴ・カフィエロ首相といった、アルベルト・フェルナンデス大統領に近い経済閣僚の辞任を求める声が高まっていた。ただ、フェルナンデス大統領は閣僚の交代は行わないとしていた。政府は現在、IMFと債務再編交渉を行っており、グスマン経済相主導で財政の引き締めを行っているためだ。

与党連合の最大政党である正義党は、中道左派のフェルナンデス大統領派、急進左派のクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル副大統領派、副大統領と一線を画す非キルチネル派など、さまざまな勢力が結集している。今回、一斉に辞表を提出した閣僚はいずれも、クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル副大統領に近い閣僚5人と複数の政府高官。この流れで、フェルナンデス大統領に近い経済閣僚らの自発的な辞任を促す狙いもあるとみられる。

大統領に近いとされる治安相、労働相や、ラ・リオハ州、カタマルカ州、トゥクマン州の知事は大統領を支持する声明を発表した。一方、与党連合系で知事を擁するブエノスアイレス州、サンタクルス州では、PASOでの敗北を受けて州政府の全ての閣僚が、知事に進退を一任した。政府に対する刷新を求める動きとみられる。与党連合の分断が危惧されるが、この流れを回避するため、非キルチネル派で首相経験者でもあるセルヒオ・マッサ下院議長が仲裁に動いているとも報じられている。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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