米FRB、金融政策の現状維持決定、次回の縮小決定示唆、利上げも2022年中に前倒しか

(米国)

ニューヨーク発

2021年09月24日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は9月21、22日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.00~0.25%とする金融政策の現状維持(添付資料図参照)と、米国債を月800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)を月400億ドル購入している量的緩和策の現状維持を決定した。今回の決定も前回同様、11人の委員の全会一致だった。

FOMCの声明文では、「(新型コロナウイルスの)パンデミックによる影響が最も大きかった産業」について、「ここ数カ月で改善したものの、新型コロナウイルス感染拡大で回復ペースが落ちてきている」として、感染再拡大がもたらす影響に懸念を示した。量的緩和策については、前回は「今後の複数の会合で判断する」とした表現を、「(経済の回復に)予想どおりの幅広い進展がみられれば、委員会は資産購入のペースを早期に縮小する必要があると判断している」と変更し、次回以降の会合で早期に縮小を決定する可能性を強く示唆した。

今回の会合では、地区連銀総裁らを含めたFOMC参加者18人による中長期の経済見通しも示された。デルタ型変異株による感染再拡大などを背景に、2021年の実質GDP成長率の予想中央値は5.9%と、6月の前回予測で示された7.0%から大幅に下方修正されている。2021年のインフレ率(コアCPE)の予測中央値は3.7%(前回3.0%)、2022年も2.3%(前回2.1%)へとそれぞれ上方修正され、最近の物価の高止まりを反映した値となった(添付資料表参照)。また、FF金利の引き上げ時期については、2022年末までに利上げを見込む参加者が9人と参加者の半数を占めた。6月の前回予測時の7人から増加しており、2022年中の利上げの可能性が高まった(注)。

ジェローム・パウエルFRB議長は会議後の記者会見で、量的緩和策について「(量的緩和策の縮小開始を)決定するのは、早ければ次の会合(11月)になるかもしれない」と述べるとともに、そのペースについて「(FOMC)参加者は、経済回復が軌道に乗っている限り、来年半ばごろに(量的緩和策を)終了する緩やかな縮小ペースが適当だろうとおおむね考えている」と述べた。また、利上げについては「利上げの判断は雇用の状況次第だ。多くの点で労働市場が非常に逼迫しているという興味深い兆候がある一方で、(人種間格差といった)ひずみもみられる」と述べつつ、「2022年を通してインフレ率が(2%よりも)高い状況が続けば、利上げの環境が整う」と述べた。

議会で現在議論が行われている債務上限問題については(2021年9月22日記事参照)、「それ(債務上限の引き上げ)に失敗すれば、経済や金融市場に深刻な影響や打撃を与える可能性がある」「失敗した場合にFRBなどが市場や経済を完全に守れると考えるべきではない」と述べ、議会による対応を促した。

(注)2023年に至っては利上げを見込む参加者が18人中17人(前回13人)となり、その利上げ回数も3回(前回2回)を見込んでいる。最近の感染再拡大による景気減速への懸念があるものの、想定以上に高止まりする物価を踏まえて、FOMC内では以前よりも早期の金利引き上げを求める意見が大勢となっていることが明らかとなった。

(宮野慶太)

(米国)

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