米環境保護庁、ハイドロフルオロカーボンを今後15年間で85%削減する規則を発表

(米国)

ニューヨーク発

2021年09月27日

米国環境保護庁(EPA)は9月23日、エアコンや冷蔵庫などの家電製品に冷媒として使用されている、ハイドロフルオロカーボン(HFC)を今後15年間で85%削減させるとする規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。2020年12月に超党派の支持により成立した法律(AIM法外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に基づく措置で、パブリックコメントを経て、今回、最終規則が発表された。

同規則では、2023年までのHFCの生産・消費量に上限を設けており、今後2年間に関連企業各社へHFC枠が割り当てられ、それ以上の生産や輸入が禁じられる。今後、追加の規則を制定して、2024~2036年にかけてさらにHFC量の上限を段階的に縮小し、2036年時点でEPAが設定するベースラインと比べてHFCを85%削減させるとしている。

HFCは、温室効果ガス(GHG)の1つであるフロンガスの一種で、フロンガスが米国のGHG排出量に占める割合は約3%に過ぎないものの、強い温暖化効果があることで知られており、特にHFCは二酸化炭素(CO2)に比べて数千倍の温暖化効果があるとされる。EPAによれば、今回の一連の規制によって、2022~2050年にCO2排出量換算で46億トンの削減効果があり、これは2019年時点の電力部門のCO2排出量の約3年分に相当するとしている。

国際的にみると、HFC削減に対する米国の取り組みは遅れている。モントリオール議定書に基づく2016年のキガリ改正(注)により、批准国はHFCを含むフロンガスの生産・使用量を段階的に削減することが義務付けられているが、米国はこれにまだ参加していない。今回の措置はキガリ改正による規制を強く意識したものとみられるが、バイデン政権は就任直後の大統領令でキガリ改正への批准に向けて準備を行うと各省庁に指示を出している。この点に関連して、ジーナ・マッカーシー気候担当大統領補佐官は「現時点で具体的なタイムスケジュールはないものの、バイデン大統領は今後、上院で批准を求めるつもりだ」と述べている(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版9月23日)。

業界団体も今回の規制を歓迎しており、GHG削減に向けて、また一歩前進したかたちだが、懸念も残る。HFCの生産・使用が制限されることにより、HFCに代わる代替技術の開発が遅れれば、エアコンなどの家電価格が今後上昇する可能性があり、業界団体の試算では最大で約2%上昇するとしている(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版9月23日)。物価が高止まりしている状況だけに、今後のHFC規制に伴う家電製品の長期的な価格動向にも注意が必要だ。

(注)2016年10月にルワンダのキガリで開催された第28回締約国会合で、代替フロンを新たに規制対象物質として追加する改正提案が採択された。

(宮野慶太)

(米国)

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