国会議員予備選挙の候補者リストが出そろう

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2021年08月17日

アルゼンチンで7月24日、国会議員予備選挙(PASO)の候補者リストの提出が締め切られた。9月12日に行われるPASOは、中間選挙に先立って行われるものだ。11月14日に行われる中間選挙で、上院は8州24議席、下院は全州127議席が改選される。PASOは、上院、下院ともにドント方式(注)の比例代表制で行われる。

PASOで得票率が1.5%に満たない候補者は本選挙に進むことができないため、PASOの主な目的は泡沫(ほうまつ)候補を除外することだが、同時に党内の意見調整の場でもある。党内調整がうまくいけばいいが、党内調整がうまくいかなければ内部抗争により疲弊してしまうことにもなる。また、本選挙に向けた「完全な世論調査」としての一面もある。実際、2019年に行われた前回のPASOでは、現職大統領のアルベルト・フェルナンデス候補が前大統領のマウリシオ・マクリ候補を大きく上回る得票率で勝利し、本選挙でもフェルナンデス現大統領が勝利を収めた。

今回のPASOに向けた候補者リストでは、与党連合「全国民のための戦線」は多くの州で候補者リストを統一できたが、野党連合「変革のために共に」は候補者リストを統一できなかった。上院は、与党連合が改選対象8州のうち5州で統一リストを提出、野党連合は2州でのみ統一リストを提出した。下院は、特に注目されるブエノスアイレス市、ブエノスアイレス州では、与党連合がいずれも統一リストを提出。一方、野党連合はいずれも複数の候補者リストを提出した。

フェルナンデス政権の発足から2年が経過したところで行われる今回の中間選挙は、同政権の信任投票と位置付けられる。与党連合は、上院では過半数の議席を持つが下院では過半数を持たないため、上下両院での過半数獲得を目指す。選挙の争点は経済と新型コロナウイルス対策だが、政府は国民受けする施策を矢継ぎ早に導入しているほか、アルゼンチンの今日の対外債務問題の責任はマクリ前政権にあるとのメッセージを前面に打ち出している。また、野党連合内の分裂もあり、今のところは与党連合が優勢とされている。

(注)各政党の総得票数をそれぞれ自然数で割っていき、得られた得票数の大きい順に議席を配分する方式。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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