イングランド銀、金融緩和策を継続も、緩和縮小前倒しの可能性

(英国)

ロンドン発

2021年08月13日

英国のイングランド銀行(中央銀行)は8月5日、前日まで開かれていた金融政策委員会(MPC)で、政策金利を過去最低の0.1%に据え置くことを全会一致で決定PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。また、金融緩和措置の1つである量的緩和(QE)についても、英国債買い入れ枠8,750億ポンド(約133兆8,750億円、1ポンド=約153円)および投資適格社債(注)買い入れ枠200億ポンドの、総額8,950億ポンドの資産買い入れ枠を維持することを決めた。

中銀は、金融政策の適切なスタンスを判断する際に、一過性の要因ではなく、中期的なインフレ率予想などインフレの見通しを注視すべき、との見解を示した。中銀はまた、少なくとも余剰生産能力の解消と2%のインフレ率目標の持続的な達成に向け大きな進展がみられるという明確な証拠が得られるまでは、金融引き締めを行わない方針を明らかにしている。

他方、アンドリュー・ベイリー総裁は同日の記者会見PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、QE縮小について、政策金利が0.5%に引き上げられた時点で、経済状況を勘案して妥当であれば、資産買入残高を削減する意向に言及。中銀はこれまで、政策金利を1.5%程度に引き上げるまで残高を削減しない考えを示していたため、今回その水準を引き下げたことで、従来の想定より早期にQE縮小を開始する可能性を示唆した。

政策金利の据え置きが全会一致で決まった一方、資産買い入れ枠の維持については、MPCのマイケル・ソーンダース委員が反対し、英国債買い入れ枠を8,750億ポンドから8,300億ポンドに減額するよう提案した。その根拠として、同国のインフレリスクを挙げ、2~3年後もインフレ率は政府目標の2%を上回っている可能性が高いとの懸念を表明。また、同氏は、12月末まで予定されている資産買い入れについても、早期に終了するよう主張している。

高インフレは一過性との見解

中銀は同8月5日、併せて金融政策報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。2021年のGDP成長率見通しは7.25%と、前回5月時点と同じだった一方で、2022年は6%、2023年は1.5%と、前回の5.75%、1.25%からともに上方修正した。また、消費者物価指数(CPI)も、2021年第4四半期に前年同期比4%上昇するとの見通しを示し、前回の2.5%から大幅な上方修正になっている。ただ、急なインフレは一時的なものとし、2022年第4四半期には2.5%、2023年末までには目標の2%程度に戻ると予測している。

(注)債務不履行リスクが低いと考えられる信用力の高い社債。

(尾崎翔太)

(英国)

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