米有識者がアフガニスタン情勢を分析、バイデン大統領は状況次第で撤退延期を示唆

(米国、アフガニスタン)

ニューヨーク発

2021年08月20日

タリバンによるアフガニスタン制圧を受け、米国軍が撤退や関係者の救出を進める中(2021年8月17日記事参照)、米国で安全保障や中東情勢を研究する有識者は、現状分析や政策提言を発表している。

外交問題評議会のリチャード・ハース会長は、米国のアフガニスタン撤退が「政権の選択による」結果と指摘する。オバマ政権期には派兵数が11万人超に達し、これまで2兆ドル以上の戦費を投じたにもかかわらず、成果は乏しく、アフガニスタン政府が主要都市を支配する一方、小都市や村ではタリバンの勢力拡大を許したと述べた。また、ドナルド・トランプ前大統領が2020年2月にタリバンと締結した合意が、停戦やタリバンの非武装化ではなく、タリバンがテロ組織をかくまわないとの限定的な約束だったにもかかわらず、ジョー・バイデン大統領が合意を引き継いだ点を批判した。

米国同時多発テロ事件後に勃発したアフガンおよびイラク戦争中に国務省や国防総省の助言役だった、戦略国際問題研究所(CSIS)のアンソニー・コーデスマン氏は、米国のアフガニスタン支援が失敗に終わったとコメントした(「ワシントン・ポスト」紙電子版8月3日)。現地の代表を選出する選挙制度や有効な警察・司法制度が確立されないまま、大統領に予算・人事権を与えた結果、市民社会や経済が発展しなかったと指摘した。

ブッシュ(子)政権時に国防副長官だったポール・ウォルフォウィッツ氏は、アフガニスタンの空港の安全確保に向けた米軍派兵は適切と評価する一方、救出したアフガニスタン国民は1,200~2,000人で、出国を望む同国民の救出は不十分と述べた(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版8月16日)。ウォルフォウィッツ氏は、米軍保有の航空機を最大限割り当てて救出を急ぐとともに、米軍撤退後もアフガニスタンからの「亡命経路」を米諜報機関が確保すべきと提案している。

救出作戦のペース次第で米軍撤退を遅らせる可能性も

バイデン大統領はABCニュースのインタビューで、アフガニスタンでの救出作戦を米軍の撤退期限である8月31日までに完了させる意向を示す一方、期限までに完了しない場合は、作戦終了まで撤退を延期する可能性を示唆した(8月18日)。大統領は、救出対象を現地に残る米国民1万~1万5,000人と(米政府に協力している)アフガニスタン国民およびその家族5万~6万5,000人として、1日5,000~7,000人のペースで救出できれば期限内に作戦は完了すると述べた。

(藪恭兵)

(米国、アフガニスタン)

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