EU、アフガニスタンのタリバンとの対話用意ありと表明

(EU、アフガニスタン)

ブリュッセル発

2021年08月19日

EUのジョセップ・ボレル・フォンテーリャス外務・安全保障政策上級代表(欧州委員会副委員長兼任)は8月17日、アフガニスタン情勢についてEUの立場を示した声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

声明ではまず「アフガニスタンの全ての当事者に対し、同国がこれまで国際社会に対して行った約束を尊重し、その上で包摂的で包括的かつ永続的な政治的解決策を見いだすよう」求めた。また、女性をはじめ(注)、子どもやマイノリティーに属する市民の健康や教育の機会の確保など、あらゆる人権の保護が必要と強調した。EUはアフガニスタンの市民および同国の民主主義や人権を守るための人道的支援を続けるとしたが、「いかなる将来のアフガニスタン政権との協力も、平和的で包摂的な社会の安定と、全てのアフガニスタン市民の基本的人権の尊重が確保されることが前提条件となる」とした。

声明は17日に開かれたEU理事会(外相理事会)の臨時会合を経て発表された。会合後の記者会見でボレル上級代表は「タリバンは戦闘に勝利した。従って、われわれは彼らと対話しなければならない」と述べ、EUとして「人道的災害や潜在的な移民・難民問題を防ぐためにできるだけ速やかに」タリバンとの対話を進める用意があると説明した。臨時会合では、ギリシャやブルガリアなど、2015~2016年にEUが移民・難民危機に直面した際に大量の難民流入の影響を受けた加盟国から、今回のアフガニスタン情勢がさらに悪化すれば同様の事態に陥りかねないとの懸念が上がったもようだ。

EUとしては当面、アフガニスタンに残るEU市民と、EUおよび加盟国の施設で働くアフガニスタン人スタッフの国外退避など安全確保を最優先事項として取り組む方針。このためにも、ボレル上級代表は「実務的な論点についてタリバンとの対話を図るために」現地のEU代表団を一時的に増強すると説明した。

また、ボレル上級代表は、アフガニスタン情勢は中央アジア地域だけでなく、国際社会全体の安全保障に大きな影響を及ぼす問題であるとし、EUの「戦略的自律性」を追求すべく、米国だけでなく関係各国とのエンゲージメントを強めていく必要があるとして、具体的にはトルコ、イラン、パキスタン、インド、中国、ロシアの名前を挙げた。

(注)EU、米国など21カ国・地域は8月18日、アフガニスタンにおける女性の人権状況に懸念を表明する共同声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

(安田啓)

(EU、アフガニスタン)

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