スペイン政府、アフガニスタンからの退避者支援に注力

(スペイン、アフガニスタン)

マドリード発

2021年08月20日

スペイン政府は8月19日未明、スペイン空軍機でアフガニスタンの首都カブールから退避したスペイン大使館員、在留スペイン人、アフガニスタン人協力者およびその家族の計53人を含む第1陣が無事、マドリードに到着したと発表した。うち48人はアフガニスタン人で、亡命申請手続き後、順次スペイン国内の保護施設などに移送される予定。スペイン政府は、さらに空軍機2機を派遣済みで、現在は大使や警備対策官を含む20人近くの関係者がカブール空港に残り、依然、現地に足止めされている協力者や人権活動家の国外退避支援に当たっている。

ホセ・マヌエル・アルバーレス外務・EU・国際協力相は8月13日、タリバン復権がアフガニスタン国民に与える深刻な被害を懸念しており、スペイン政府は、力ずくで樹立された政権を承認するつもりはないとして、タリバン支配地域における国際人道法や人権の侵害を強く非難した。また16日には、EUと北大西洋条約機構(NATO)の枠組みの下、両機関に協力するアフガニスタン人退避者のスペインでの一時的な受け入れを申し出ており、既に実行に移されている。

EUのジョセップ・ボレル・フォンテーリャス外務・安全保障政策上級代表(欧州委員会副委員長兼任)は8月18日、スペイン国営ラジオ(RNE)のインタビューに対し、「今回の事態は西側諸国の敗北だ。われわれはそれを率直に認め、理由を分析する必要がある。これは深刻な地政学的事態で、世界のパワーバランスも必然的に変わる」と述べた。また、タリバンとの対話については、「当然必要だ。首都を制圧したタリバンと話さなければ、空港にすらアクセスできない」とした。さらに、人道危機を回避するためには、関係が円滑とはいえない国も含めて、周辺国との協力が不可欠とした。

また、主要シンクタンクである王立エルカノ財団のフェリックス・アルテアガ安全保障担当首席研究員は8月17日、「エル・ムンド」紙への寄稿記事で、「タリバンは米国が2014年に戦闘作戦終了を決定した時から少しずつ権力奪還を図っていた。2015年以降は、多国籍軍ではなく、行政・司法機関のキーパーソンに武力攻撃の矛先を向け、国家機構のプレゼンスを低下させていった。アフガニスタンで活動する国際機関やメディアはそれを刻々と伝えていたが、多くの人々がそれを軽視していたため、今回のタリバン復権の早さは驚きをもって受け止められた」と解説している。

(伊藤裕規子)

(スペイン、アフガニスタン)

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