熱中症対策ウェアラブルデバイス開発のバイオデータバンク、フランス全土で実証実験

(フランス)

パリ発

2021年08月18日

熱中症予防のウェアラブルデバイスを開発するBiodata Bank外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(バイオデータバンク)(本社:東京都渋谷区)と子会社のHEATVANCE外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(ヒトバンス)(本社:東京都渋谷区)は2021年夏、フランスの建設業従事者保護のための主要2団体との提携により、フランス全土で実証実験を開始した。8月6日に、提携先の1つ、フランス建設業災害防止団体(OPP-BTP外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)による同実証実験の中間報告が行われ、OPP-BTPイノベーション推進部のモハメッド・トラベルシ氏は「Biodata Bankの熱中対策ウォッチは熱中症予防の革新的な解決策で、実験に多くの建設会社が参加していることは製品に対する関心と期待の表れだ」と高く評価した。

2018年設立のBiodata Bankは、深部体温(体の内部の温度)を推定するセンサーを搭載した熱中症予防のウェアラブルデバイスを開発するスタートアップだ。同社が開発するデバイスは、独自の技術を活用して深部体温をモニタリングしながら、熱中症のリスクが高まったタイミングをLEDと警告音で着用者に知らせるというもの。

2019年に環境省の「熱中症予防対策ガイダンス策定に係る実証事業」に採用され、日本とフランスを含む7カ国において、建設業従事者を中心に約4,000人を対象とした実証実験を実施し、2020年に日本国内での販売を開始した。2020年1月には、世界最大規模のインキュベーション施設であるフランスのステーションF外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに日本企業として初めて入居した。

「新型コロナウイルス禍」の逆風にもかかわらず、同社はフランスを拠点に積極的に海外展開に取り組み、2021年6月に建設業従事者保護のための主要団体OPP-BTPと建設業保険団体(PRO-BTP外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)との提携を発表し、今夏、フランス全土でウェアラブルデバイスの実証実験を開始した。

同2団体はフランスの建設企業が加入する全国規模の団体で、実証実験は大手建設企業25社の協力を得て実施され、建設現場など暑さが厳しい環境で働く約900人が参加している。25社の協力企業には、建設大手のブイグ(Bouygues)、エファージュ(Eiffage)、ユーロビア・バンシ(Eurovia- Vinci)などが含まれる。OPP-BTPとPRO-BTPによれば、同2団体が共同でスタートアップ支援を行うのは、今回が初めてとのことだ。

Biodata BankのCSO(Chief Global Strategy Officer)のダヴィッド・アントワーヌ・マリナス氏は「当社がPRO-BTPとOPP-BTPによる初のスタートアップ支援事例となり、フランス側からの大きな期待を得ていることを大変名誉に思う。同2団体との貴重な提携機会を最大限利用したい」と話す。

また、同社の安才武志CEO(最高経営責任者)は「2020年はインドで、2021年にはカナダ西部から太平洋岸北西部はじめ北米大陸でも熱波が発生しており、熱中症のリスクは世界全体に広がっている。当社がフランスで築いた実績やネットワークを生かし、欧州を起点に世界各国へ展開していきたい」と意気込みを語った。

同社製品は、今回のフランス主要団体・企業との連携を皮切りに、フランスでの販売開始に向けて大きく前進したほか、今後、欧州にとどまらず世界各地への展開が期待される。

ジェトロは同社の欧州展開に当たり、2019年から「グローバル・アクセラレーション・ハブ」事業の一環として、メンタリング、パートナー探し、ビジネスマッチングなどの支援を提供している。

写真 フランス大手建設会社エファージュ(Eiffage)の南フランスの現場にて実証の様子(Biodata Bank提供)

フランス大手建設会社エファージュ(Eiffage)の南フランスの現場にて実証の様子(Biodata Bank提供)

写真 「熱中対策ウォッチ カナリア™」製品画像(Biodata Bank提供)

「熱中対策ウォッチ カナリア™」製品画像(Biodata Bank提供)

(遠藤朋美)

(フランス)

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