G7首脳会議、アフガン情勢めぐり国外退避やテロ対策で協働確認

(英国、アフガニスタン)

ロンドン発

2021年08月25日

緊張が続くアフガニスタン情勢をめぐり、8月24日にG7首脳会議がオンラインで開催された。2021年にG7議長国を務める英国のボリス・ジョンソン首相や米国のジョー・バイデン大統領、日本の菅義偉首相らに加え、北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長、国連のアントニオ・グテーレス事務総長も参加した。

各国首脳は、会議後に公表した共同声明(原文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語仮訳PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))の中で、現地情勢について重大な懸念を表明。その上で、現地在留G7各国民とアフガニスタン人協力者の継続的な国外退避を喫緊の優先事項として挙げ、難民受け入れ国やアフガニスタン周辺国と協働する考えを明示した。タリバンに対しては、テロ防止、人権保護、インクルーシブな政治的解決に向けた行動に説明責任を負うと主張。将来の政権の正統性は情勢安定化につながる国際的義務を守るための取り組み方次第だとし、タリバンを牽制した。このほか、テロ拡散防止や、女性、子供、少数派住民などの権利保護を課題として挙げ、国連やG20などを通じて関係国と協力し、これらを追求する考えを示した。

焦点となっている8月31日の米軍撤収期限の延長も議論されたが、延期は表明されなかった。カナダのジャスティン・トルドー首相によると、首脳会議では米軍撤収期限後も外国人や現地協力者の国外退避を認めるよう、タリバンに要求することで一致(「BBC」8月24日)。こうした経緯から、共同声明で継続的な国外退避を強調したとみられる。これについて、英国の最大野党・労働党はじめ野党各党は、バイデン大統領を説得する計画なく会議に臨んだジョンソン首相の失敗だとして、一斉に非難している(同)。

中ロの協力が不可欠との見方も

アフガニスタン情勢安定化には、G7など西側諸国だけでの対応には限界もある。ドミニク・ラーブ外相は8月21日の「テレグラフ」紙の取材で、いずれはロシアや中国の協力が必要になるとの見通しを表明した。

英国王立防衛安全保障研究所のラファエロ・パントゥッチ研究員は、中ロは西側の失敗を喜びこそすれ、両国内のイスラム過激派を支援してきたタリバンの統治を歓迎するわけではないと分析。その上で同研究員は、特に英国と中ロはアフガニスタン発のテロの脅威を懸念する点で共通しており、細部で不一致があっても現地情勢安定という目的は一致するため、その大枠に集中して協力し、人道的危機回避に向けたタリバンへの働き掛けや周辺国支援拡大を中ロに促すべきだと主張している。

(宮崎拓)

(英国、アフガニスタン)

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