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アフガニスタン情勢を踏まえ開発援助を停止、難民受け入れの議論も

(ドイツ、アフガニスタン)

ベルリン発

2021年08月20日

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は8月16日、アフガニスタン情勢に関する会見を行い、ドイツと同盟国によるテロとの戦いと自由な政治体制構築の取り組みが、今回の展開を迎えたことは「苦い」ものになったと述べた。さらに、2015年の欧州難民危機(注)を繰り返してはならないと警告、アフガニスタンに隣接する国々に退避するアフガニスタン人に対する迅速な人道支援実施の考えを示した。

メルケル首相は8月18日に米国のジョー・バイデン大統領と電話で協議し、両国はカブール空港におけるドイツ連邦軍と米国治安部隊による緊密な協力関係の構築と、人権を脅かされる恐れのある人々について1人でも多くの国外退避を行うことで合意した。

ドイツ政府は8月15日深夜に軍用機を首都カブールに送り、翌16日から同国に在住するドイツ人、ドイツの活動を現地で支援するアフガニスタン人、支援活動に携わるパートナー国の国民などの退避を開始。19日までに900人以上をアフガニスタンから出国させた。ドイツ国内では、ベルリン市、ノルトライン・ウェストファーレン州、バーデン・ビュルテンベルク州などで退避した約4,000人のアフガニスタン人の受け入れ準備を進めている。

ドイツへの難民受け入れの方針は意見が分かれる。与党・キリスト教民主同盟(CDU)のアルミン・ラシェット党首は、全難民の受け入れではなく、アフガニスタンの近隣諸国に流入する難民への国際的な人道的支援の優先を主張。緑の党のアンナレーナ・ベーアボック共同党首は、NATO支援をしてきた現地スタッフや女性人権活動家など危害にあう可能性の高い人々の数万人規模での受け入れを要求。極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」のアリス・ワイデル連邦議会議員は、大量の難民流入の予防策は「完全な国境警備と入国許可書がない移民の拒否」とした。

ハイコ・マース外相は、ドイツからの2021年の開発援助資金の総額4億3,000万ユーロについて、タリバンが政権を握った場合は「1セントたりとも提供しない」(「公共放送局ZDF」8月12日)と発言、8月17日に開発援助の一時停止を発表した。この開発援助には、シーメンス・エナジーによる電力網整備のインフラプロジェクトなども含まれる。

ドイツ国際政治安全保障研究所のマルクス・カイム上級研究員は「テロの脅威と難民の流入は交渉を通じてのみ回避可能」として、資金援助を停止しタリバンを孤立させるドイツ政府の対応を批判。西側諸国がタリバン政権との交渉を拒否すれば、ロシアと中国が自国内へのイスラム過激派からの影響防止のためタリバン政権を容認し、その結果、アフガニスタンの鉱床利権獲得や、カブールにつながるヒンドゥークシュ山脈の「一帯一路」への統合などにより、両国が経済的利益を得る可能性があることを指摘した(「ハンデルスブラット」紙8月16日)。

(注)2015年に中東やアジアから100万人超の難民や移民が、地中海や欧州南東部を経由してEUに流入し、社会的・政治的な危機が生じた。

(中村容子)

(ドイツ、アフガニスタン)

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