米軍のイラクでの戦闘任務が2021年末までに終了、治安の行方が懸念材料に

(イラク、米国)

ドバイ発

2021年08月03日

7月26日、イラクのムスタファ・アル・カディミ首相と米国のジョー・バイデン大統領はホワイトハウスで会談を行い、2021年末までに米軍によるイラクでの戦闘任務を終了することで合意した。

会談でバイデン大統領は「イラクでのわれわれの役割は、(イラク軍を)訓練し支援を継続することで、イラクがISIS(「イスラム国」)に対処できるようにすることだ。戦闘任務は今年の年末までに終了するだろう」と述べ、「安全保障面で協調し、ISISと共闘することは、この地域の安定のために重要であり、(戦闘任務終了後も)継続する」と述べた。一方で、イラクに駐留する米軍の削減については言及しなかった。

また、米国がイラクへ50万回分の新型コロナウイルスワクチンを提供することを明らかにするとともに、「イラクの民主主義が強化されることを支持し、10月に選挙が行われることを期待している」と述べた。カディミ首相は、「米国とイラクの関係はかつてなく強固だ」と述べ、米国に感謝の意を表した。

会談後、米国のジェン・サキ報道官は記者会見で、「(今回の合意の)最も重要な点は、使命の変化だ。イラクにおける(米軍の)使命は変化し続けており、その使命にとって必要なことを行っていく」と述べたが、駐留する兵力をどの程度削減するかについての記者の質問には回答しなかった。

翌27日、カディミ首相は「アル・イラクヤ・ニュース」による独占インタビューに答え、「今回の戦略的対話の最も重要な成果は、イラク側の政治勢力の立場を統一できたことである。イラクと米国の関係は新しいステージに入るだろう」と述べ、イラク軍は治安を維持できると強調した。

今回の合意に関し、イラク国内の多くの政治派閥が賛同を表明している一方で、一部の親イランとみられるシーア派民兵組織は、合意内容が撤退ではなく戦闘任務の終了にとどまることを受けて、合意への反対を表明。7月29日には、首相府や国民議会をはじめとした政府機関や各国大使館などが立地するバグダッドの「グリーン・ゾーン」内にある米国大使館付近にロケット弾2発が撃ち込まれており、今後の治安の行方については、日系企業の現地ビジネスにとっても懸念材料となっている。

(太田尭久、オマール・アル・シャメリ)

(イラク、米国)

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