インフラ会社のガスニー、水素ネットワーク構築へ

(オランダ)

アムステルダム発

2021年08月02日

オランダのガス輸送、貯蔵などのインフラ会社ガスニーは7月21日、2021年上半期報告の中で、政府の要請を受けて、水素ネットワーク構築のための国家的なインフラ開発を行うと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これにより、オランダは水素ネットワーク構築に既存のガスパイプラインのネットワーク活用を開始する欧州最初の国となる。同社の最高経営責任者(CEO)のハン・ファネマ氏は、水素の供給者と購入者は水素の輸送インフラが整備されることで具体的な投資計画や二酸化炭素(CO2)排出目標などを立てることが可能になるとした。同社は2030年までに水素のインフラ開発のために70億ユーロ投資する見込み。

2027年をめどに水素ネットワーク構築を目指す。全体の85%のパイプラインは既存の天然ガスパイプラインを活用することで、新たにパイプラインを敷設するよりも4分の1のコストに抑えることができる。ネットワークの容量は10ギガワット(GW)で、オランダの産業全体のエネルギー消費量の約25%に相当するが、将来的には圧縮技術を活用することによりさらに多くの容量が輸送可能となり、かつ、天然ガス消費量の減少によりパイプラインの多くを水素輸送に転換できると見込む。

この発表に先立って政府は6月30日、水素ネットワーク構築に関する調査報告書「HyWay27外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を公表、既存のガスパイプラインを水素輸送に再利用することは実現可能で、安全かつ費用対効果が高く、水素ネットワーク構築に向けた第一歩を踏み出したと結論付けていた。同調査報告書では、水素ネットワークの構築は経済とエネルギー供給で水素活用を促進するための重要なステップで、短期的には産業界の需要、長期的にはモビリティーや電力部門の需要が見込まれると評価。これに基づき、政府はガスニーに水素ネットワーク構築のためにガスパイプラインの開放を要請していた。政府は今後、水素輸送がいつ、どこで必要になるかについて、クラスターエネルギー戦略(CES)ともすり合わせを行う。ただ、ネットワークをどのように敷設し、どのように資金調達をするのかなどは、次期内閣が意思決定することとなる。

経済・気候政策省のイエスシリガス・ゼゲリアス国務相は「安全かつ効率的なガスネットワークの活用は国内産業にとって見過ごすことのできない大きな持続可能性の機会を提供する」と述べた。

(高橋由篤)

(オランダ)

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