雇用は大幅増、労働者の新型コロナ懸念は減少傾向、米シカゴ連銀ベージュブック

(米国)

シカゴ発

2021年07月27日

米国連邦準備制度理事会(FRB)が7月14日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注1)の中で、米国中西部の一部地域(注2)を管轄するシカゴ連銀は、5月下旬から6月にかけての同地域の経済活動について、緩やかに(moderately)向上したものの、多くの分野で労働力や資材の供給制約により、成長は限定的と報告した。調査対象者からは、今後数カ月で経済活動がさらに活発になることを期待する声が聞かれた。

同地域の経済活動を分野ごとにみると、雇用に関しては、大幅に(strongly)増加した。人材派遣会社によると、人手不足に伴う求人の増加に伴い、労働者は職場環境やスケジュールの柔軟性、賃金について、より選択的となり、離職率が増加しているとの報告があった。また、雇用主、人材派遣会社、労働力開発機関からは、新型コロナウイルスによる健康上の安全性に関する労働者の懸念はほとんどなくなったとの報告もみられた。

個人消費は横ばい(flat)となった。物価上昇にもかかわらず消費意欲は旺盛で、娯楽やサービス関連、特にレストランやスポーツ会場、国立公園の売店などで消費が回復した。小型自動車の新車・中古車販売は、在庫が不足しているものの、利益率は拡大したという。

企業支出は緩やかに(moderately)増加した。製造業では、依然として原材料やマイクロチップ、特殊部品などのサプライチェーンに課題があり、この状況は2022年まで続くと見込まれている。輸送サービスに対する需要は高く、米国内外から出荷の遅れが多数報告されている。設備投資については緩やかに増加しているものの、設備導入までの待ち時間がかなり長く、在庫コストの増加が設備導入の妨げになっているとの声もあった。

製造業の活動は控えめに(modestly)増加しており、多くの分野で新型コロナウイルス感染拡大以前の水準を上回っているものの、物流や供給の問題が成長の妨げになっているとの報告がみられた。自動車生産台数は、マイクロチップをはじめとする部品の不足が続いているため、ほとんど変化がなかった。多くの企業が生産能力をフルに活用することで、材料不足やサプライヤーのリードタイム長期化に対応した。

農業分野に関しては、農産物価格が高い水準を維持し、輸送費、エネルギー、肥料、賃金などのコスト増を相殺している上、所得は向上傾向にある。トウモロコシと大豆の作付面積は前年より増加したが、当初の予測よりも少なかったため、価格の維持につながった。また、食肉処理場では労働者が不足し、養鶏農家との契約が一部中断されているとの報告もあった。

個々の調査対象項目ごとのポイントは添付資料を参照。

(注1)連邦公開市場委員会(FOMC)の開催に先立ち、年8回公表されており、銀行からの報告や、ビジネス関係者などの声を基にまとめたもの。

(注2)アイオワ、イリノイ北部、インディアナ北部、ウィスコンシン南部、ミシガン南部。

(小林大祐)

(米国)

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