製造強国実現に向け、2025年までに1万社の「小さな巨人」企業を育成

(中国)

北京発

2021年07月08日

中国の工業信息化部などの中央政府・関連6部門は7月2日、製造強国の実現に向け、中核となる優良製造企業を育成するための指導意見を発表した。同意見では、2025年までに、優れたイノベーション能力を備え、成長が見込まれる「小さな巨人」企業の1万社育成や、「ニッチトップ」(注1)企業の1,000社育成、国内外で技術や標準などについての国際競争力を備え、強い影響力を持つ「リーディング」(注2)企業の一定数育成が示された。

同意見が発表された背景には、「第14次5カ年(2021~2025年)規画および2035年までの長期目標綱要」で、中小企業の専門化を推進し、「小さな巨人」企業や製造業の「ニッチトップ」企業を育成すると示されたことに加え、産業チェーンやサプライチェーンにおける自主コントロール能力の向上が喫緊の課題とされていることがある。

政府は、優良企業が国家重大科学技術プロジェクトなどに参加するための支援を行うほか、優良企業を中心とした技術イノベーション戦略連盟を組織し、基幹部品、基礎材料、ハイエンド計測機器、集積回路などの技術開発を行うことを支援する。また、「リーディング」企業を取りまとめ、戦略的協力や吸収合併などにより、産業チェーン、サプライチェーンの整理統合を行い、産業チェーンの競争力とリスク耐性を引き上げる方針も示した。

国外展開面では、「リーディング」企業や「ニッチトップ」企業がグローバルに研究開発拠点を設置することを奨励するとし、「一帯一路」構想を重点に、グローバルな産業チェーン、サプライチェーンへの参入を強化する。

資金面では、政府の各種基金を活用した支援を行うことや、条件を満たす優良企業の上場や債券発行を支援する。

なお、2015年に発表された「『中国製造2025』の印刷・配布に関する国務院通知」でも、「小さな巨人」企業を育成する方針が示されていた。工信部はこの方針を受け、2016年と2018年に「小さな巨人」企業と「ニッチトップ」企業の選抜育成を行い、2019年には「リーディング」企業の育成を開始した。その結果、現時点で「リーディング」企業は596社、「小さな巨人」企業は1,832社となった。

中国米国商会は4月に発表した白書の中で「中国政府は、中国製造2025について表面上取り上げることはほとんどなくなったものの、その産業戦略目標に向けて強力に各種取り組みを進めている」との認識を示していた。

(注1)ニッチ市場における特性産品の生産技術や市場シェアが国際的なトップレベルにある企業。中国語では「単項冠軍企業」。

(注2)中国語では「領航企業」

(注3)「『中国製造2025』の印刷・配布に関する国務院通知」では、「競争力が高く、成長性のある、細分化された市場に特化した、専門性の高い『小さな巨人』企業を発展させる」との方針が示されていた。

(藤原智生)

(中国)

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