SMMT、EV向け超大型バッテリー工場建設支援など政府に要求

(英国)

ロンドン発

2021年07月02日

英国自動車製造者販売者協会(SMMT)は6月29日、国内自動車産業の維持・成長に向けた新計画「フルスロットル: 英国自動車産業の競争力の推進外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。この計画では、12項目の政策提案(添付資料表1参照)と、2030年までのロードマップ(添付資料表2参照)を示している。

計画の中では、2030年までに電気自動車(EV)向け超大型バッテリー工場「ギガファクトリー」の建設により60ギガワット時(GWh)のバッテリー生産容量を確保することと、同年までに少なくとも230万台の公共充電ポイントを全国に設置することを政府に要求。また、80GWhのバッテリー生産容量を確保する最良のシナリオでは、2030年までに4万人の雇用を創出できる可能性があるとしている。

SMMTは、これらの計画が実行されれば、英国の自動車産業は成長軌道に乗り、イノベーション、生産性、企業を後押しし、社会全体に利益をもたらすことになるとした一方で、計画が実行されなければ、同産業は各国の後れを取り、生産量の減少や雇用の喪失を招くほか、化学や鉄鋼、金融や広告など自動車産業が支えている多くの分野で経済的な影響を受けると警告している。さらに「ギガファクトリー」が1カ所だけ(2021年2月25日記事参照)で、バッテリー生産能力が15GWh未満となる最悪のシナリオでは、標準的なシナリオ(生産能力60GWh確保)と比較して、約9万人の雇用が主に地方で失われ、地域格差を広げるとした。

SMMTは、ゼロエミッション車の製造コストは低下しているが、英国が世界的なシェアと生産量を維持しながら2030年までにガソリン車、ディーゼル車の新車販売を禁止する目標(2021年5月13日付地域・分析レポート参照)を達成するには、十分なスピードではないと評価。また、他の主要国の政府とは異なり、英国政府はバッテリー生産のインセンティブ、充電ネットワーク、安価なクリーンエネルギーへの十分な投資をまだ行っておらず、投資のリードタイムを考えると、今後2年間に多くの重要な政策決定を行う必要があるとしている。

第三者機関の分析は、2025 年までに英国が確保するバッテリー生産容量を12GWhと予測。ドイツ164GWh、米国91GWh、フランス32GWhに対して少ないと指摘している。

SMMTのマイク・ホーズ最高経営責任者(CEO)は「今後数年間は自動車産業にとって重要な時期となる。技術革新のペースは加速し、競争はますます激しくなってくる」とした上で、「今こそ、英国の最も重要な産業の1つを支援するために、全力で大胆な行動を取るべきだ」と述べ、政府に大規模かつ速やかな支援を求めた。

(宮口祐貴)

(英国)

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